日本大百科全書(ニッポニカ) 「鬼北(町)」の意味・わかりやすい解説
鬼北(町)
きほく
愛媛県の南部に位置する北宇和(きたうわ)郡の町。2005年(平成17)北宇和郡の広見町(ひろみちょう)と日吉村(ひよしむら)が合併して成立。東は高知県に接し、県境に地蔵山(1128メートル)、霧立山(1096メートル)、高研山(1055メートル)、南部に戸祇御前(とぎごぜん)山(946メートル)などがそびえる。四万十川の支流広見川および同川に注ぎ込む支川がいく筋も町内を流れる。南西部を走るJR予土(よど)線の3駅があり、国道197号、320号、381号、441号が通る。広見川東岸の岩谷(いわや)遺跡は縄文後期の遺跡で配石遺構も出土している。生田(いくた)には中世の鳥屋ヶ森城跡(とやがもりじょうあと)があり、川後森(かごのもり)城(松野町)の城主渡辺氏の家臣芝氏の居城とされる。江戸時代、当初は宇和島藩領であったが、山間部を中心に支藩の吉田藩領となった。鬼北盆地の近永(ちかなが)村に宇和島藩代官所、広見川上流域の下鍵山村には吉田藩の番所が置かれた。両藩とも製紙業を奨励したが、1793年(寛政5)には紙専売制反対の吉田藩領惣百姓一揆(武左衛門一揆)が起きている。
産業は米作のほか野菜やユズなどの果樹、クリ・シイタケの栽培、酪農、畜産、キジの飼育も行われている。清流広見川はアユ、ウナギ、モクズガニなどの宝庫である。南西部にあたる奈良川上流の成川渓谷は足摺(あしずり)宇和海国立公園に含まれ、休養センターや高月温泉がある。面積241.88平方キロメートル、人口9682(2020)。
[編集部]