魚市(読み)サカナイチ

デジタル大辞泉 「魚市」の意味・読み・例文・類語

さかな‐いち【魚市】

魚市場うおいちば」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「魚市」の意味・読み・例文・類語

うお‐いち うを‥【魚市】

〘名〙 魚類塩合物などを売買する市。うおいちば。うおのいち。
玉葉‐文治四年(1188)九月一五日「鳥羽南楼辺、并草津辺、依河水浅、不船、仍於魚市船」
浮世草子日本永代蔵(1688)四「舟町の魚(ウヲ)市」

ぎょ‐し【魚市】

〘名〙 うお市場。
風俗画報‐一六八号(1898)人事門「好みのこしらへに念を入れ銭ばなれよきは、此魚市(ギョシ)の人なりと」

さかな‐いち【魚市】

〘名〙 商人海産物などを取引きする市。うおいち。
※俳諧・名物かのこ(1733)下「汗ひかり橋から飛や肴市〈沾霞〉」

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改訂新版 世界大百科事典 「魚市」の意味・わかりやすい解説

魚市 (うおいち)

魚介類を専門に取り扱う市場。《玉葉》文治4年(1188)9月条にみられる〈魚市〉は淀魚市と思われ,鎌倉の初期すでにその成立をみて京都への魚介類販売を行っていた。最初は鮮魚を主としたが時代がくだるにしたがって,塩や腐敗のおそれの少ない塩合物の類を専門に取り扱うようになった。市場は専門的卸売商人である問丸によって運営され,その品物洛中の六角魚市や塩屋,また西岡付近の塩座に卸された。六角町の魚市では1333年(元弘3)ころ供御人(くごにん)10余人が魚商を営んでおり(《内蔵寮領目録》),1467-80年(応仁1-文明12)ころには上京今町にも鮮魚市場が営まれていた。このほか祇園祭の期間中今宮神人(じにん)がハマグリや鮮魚の販売を許可されたり,近江粟津の魚座(粟津橋本供御人)も淡水魚の販売を行うなど,魚介類の販売は座をめぐって紛争が絶えなかった。

 しかしこの魚市が発達したのは,江戸時代の都市勃興以後である。伏見には築城のころ魚屋町(伏見区),京都には1637年(寛永14)ころ魚棚町(下京区下魚棚通油小路西入)があり,都市の町名に肴町あるいは魚町,魚屋町などと称されるのは,ほとんど魚市場のあったところである。このほか錦小路魚市場は,近世以降現代でも有名であるが創立年代は不詳である。ただ応長1年(1311)付の淀魚市次郎兵衛尉宛為替状(厳島神社反古裏紙背文書)に,淀魚市の商人が洛中錦小路で替銭をするよう依頼されていることからみて,その成立は鎌倉時代にまでさかのぼるものかもしれない。一般には江戸日本橋魚市場大坂雑喉場(ざこば)の魚市が有名である。前者の成立については諸説ありつまびらかでないが,1590年(天正18)の徳川家康の入城後,三河人にこの辺で魚の専売を許したのにはじまるとか,同じころ摂津西成村,大和田村の漁夫30余名がここに来住し,幕府膳所用魚の余分を売りさばいたのにはじまるとかいわれる。今も日本橋川に沿ったあたりを魚河岸(うおがし)と称している。後者は豊臣秀吉の築城後靱町(東区伏見町)に定められたのにはじまり,1618年(元和4)上魚屋町に移転,のち鷺町に移って西海の魚荷を集めた。そのうち乾魚を扱うものはわかれて阿波座に移り靱町と唱えた。なお地方の城下町にもそれぞれ魚市場が設けられた。
魚市場 →魚問屋
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「魚市」の解説

魚市
うおいち

鮮魚類を売買する市場。近世初頭,都市の発達とともに都市住民の水産物需要をまかなうため,鮮魚の円滑な流通を期して設置された。京都の魚市は元和年間に始まり,万治・寛文頃には市内3カ所に魚屋町があり,三店(さんだな)魚問屋と称し25軒の問屋があった。大坂では天正年間に始まり,鮮魚商人は1618年(元和4)天満町・靭(うつぼ)町から上魚屋(かみうおや)町に移住したが,のち京町堀と江戸堀のあたりが魚市場(雑喉場(ざこば))となった。1772年(安永元)に鑑札をうけていた問屋は84,仲買は103。江戸の魚市場は江戸初期に摂津国佃村から移住した漁民が,幕府へ上納した残りの菜魚の売場を日本橋本小田原町・本船町に開設したことに始まる。近代ではこれらは中央卸売市場の一つとなった。

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普及版 字通 「魚市」の読み・字形・画数・意味

【魚市】ぎよし

魚市場。

字通「魚」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の魚市の言及

【魚市】より

…魚介類を専門に取り扱う市場。《玉葉》文治4年(1188)9月条にみられる〈魚市〉は淀魚市と思われ,鎌倉の初期すでにその成立をみて京都への魚介類販売を行っていた。最初は鮮魚を主としたが時代がくだるにしたがって,塩や腐敗のおそれの少ない塩合物の類を専門に取り扱うようになった。…

【魚市場】より

…水産物の取引を集中的に行う場所,または施設のことをいう。一般には,小売ではなく卸売の取引を行う魚市場を指している。うおしじょう,さかないち,魚河岸,五十集(いさば)などともよばれる。…

※「魚市」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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