魚料理(読み)さかなりょうり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「魚料理」の意味・わかりやすい解説

魚料理
さかなりょうり

魚、およびエビ、イカ、タコ、貝類などを主とした料理。淡水魚の料理をとくに川魚(かわうお)料理として分類することもある。

 西洋料理ではシーフーズsea foods料理、中国料理では海鮮料理ともいう。魚を多く食べるのは日本特有のように思われているが、けっしてそうではなく、魚を食べる地域は世界中に広がっている。国や地方などにより食べ方もいろいろあり、特徴がある。また、各地に特有の名物料理のあることが多い。各国で特有の料理としては、刺身、煮魚、握りずし、なれずし(以上日本)、ブイヤベース(フランス)、パエリャ(スペイン)、ウナギの薫製(イタリア)、コイの青煮(ドイツ)、糖醋鯉魚(タンツウリーユイ)(中国)などがある。日本での各地の名物料理としては、はもちり、鯖(さば)の棒ずし(京都)、鰹(かつお)のたたき(高知)、焼きあなご(兵庫)、かに豆腐(鳥取)、うなぎの蒸籠(せいろ)蒸し(福岡)、伊予薩摩(さつま)汁(愛媛)、ますずし、あんこう鍋(なべ)(富山)など、各地にさまざまのものがある。

河野友美

調理

下ごしらえ

魚は新鮮なものを求め、水でよく洗う。次にうろこを落とす。うろこ引きまたは出刃包丁で、尾から頭へ向かってこすり、うろこをかき取る。アジの場合は、尾から腹にかけて、うろこの変形したとげのような「ぜいご」があるので、それを取り除く。次に内臓を除く。腹を手前にして置き、えらぶたを持ち上げ、包丁の刃先でえらの付け根を切り、えら下から包丁を入れて臀(しり)びれのところまで切り開いて、えらとわたをとり、水でよく洗って水けをふく。尾頭付きの場合は、うろこを除いたあと、えらぶたを開き、包丁の刃先を上向けにしてえらから差し込み、えらをひっかけて引き出す。内臓は、魚の裏側の胸びれの下に浅く切り込みを入れて取り出す。アジ、イワシなどの小魚で姿のまま調理する場合は、えらぶたをあけ、えらの付け根を切り、包丁の先でえらといっしょに内臓を引き出す。これをつぼ抜きという。

 エビは、頭をとり、殻をむき、背わたを除く。殻をむくと背中に透き通って黒い線状のわたが見えるので、竹串(たけぐし)などを刺し、ひっかけて除く。殻付きのまま背わたをとるときは、エビを丸く曲げ、殻と殻の間に串を刺して除く。イカは、甲のあるものは背に包丁を入れて甲を除き、足を抜き取り、皮と身の間に指を入れて皮をむく。甲のないものは、足の付け根を持ってそっと引っ張り、わたごと胴から抜き出す。料理によっては皮をむく。薄皮はふきんでこすり取る。タコは、塩をふってもみ、ぬめりをとり、頭を裏返して内臓を除く。普通はこれをゆでて用いる。ナマコは、両端を切り落とし、縦に切って内臓を除く。または布を巻き付けた菜箸(さいばし)をナマコの中に通してよく洗う。ざるに入れ、塩をたっぷりふって揺すり、ぬめりを除く。貝は、アサリハマグリなどの海水産は海水程度の塩水につけて、シジミなどの淡水産は真水につけて、砂をはかせる。アワビは、肉にたっぷり塩をふり、たわしでこすって汚れを落とす。殻と身の間にへらを差し込み、えぐって身を外し、内臓を除く。

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おろし方

魚は種類や用途により、切り方、おろし方が異なる。頭を除いたあと、片身に骨がついたままおろしたものを二枚おろし、中骨を除き、上身、中骨、下身の3枚におろすおろし方を三枚おろしという。カレイ、ヒラメなど平たい魚は、内臓、頭を除き、身の中央に縦に包丁を入れ、中骨に沿って左右に身をすき取る。裏側も同様にする。身が4枚、骨が1枚、計五つにおろすので五枚おろしという。かつお節をつくるときと同じおろし方なので節(ふし)おろしともいう。サンマ、キスなど小形で細い魚は、頭を切り落とし、頭のほうから中骨が下になるように、身と骨の間に包丁を入れ、包丁を上下に動かしながら尾まで切り離す。裏側からも同様にする。このおろし方は、骨に身がついてぜいたくなので大名おろしという。小さい魚をてんぷらやフライにするときは、背開き、腹開きにする。背開きは、頭を除いたあと背側から中骨に沿って包丁を入れて左右に開いたもの、腹開きは、腹側から開いたもので、開いたあと中骨を除き、腹骨をすき取る。

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切り方

筒切りは、頭の付け根から直角に包丁を入れて頭を切り、切り口から内臓を除き、水で洗ったあと、頭のほうから輪切りにする。サバ、コイなどに用いられることが多い。一文字切りは、おろした魚の身に包丁を垂直角に当ててそのまま手前にまっすぐに引いて切る。そぎ切りは、三枚におろした魚を皮を下にして置き、包丁を斜めに入れて切る。

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串の打ち方

姿焼きや、切り身などを形よく焼きたいときは、串に刺して焼く。おどり串(うねり串)は、魚を姿焼きするときに、生きた姿のように焼き上げる場合に使う。盛り付けたとき下になるほうの目の下から串を入れ、中骨を縫うようにして魚をうねらせ、尾がぴんと跳ね上がるように裏側の尾のそばに出す。平(ひら)串は、うねらせなくてもよい魚や、大量に焼くときに使う。一尾魚で姿焼きの場合は、1本の串を骨に沿ってまっすぐに、数尾をいっしょに焼くときは、頭を左、腹を手前に並べて串を打つ。切り身のときは、身の厚いほうを向かい合わせにし、2本串を打つ。扇刺しは、身のくずれやすい魚の姿焼きや、切り身を焼くときに、3、4本の串を扇形に広げて打つ。つま折り串は、三枚におろした魚の身が薄いときや細長いときに用いる。皮のついたほうを下にして頭と尾のほうを内側に巻き、2本の串で止めるのを両づま折り、頭のほうだけを内側に折り曲げて串を打つのを片づま折りという。すくい串は、イカのように平たく大きく、火が通ると身が巻き上がるものに用いられる。裏側から縫うようにして数本の串を打つ。このほか、エビを殻付きのまままっすぐ焼くときは、尾の方から頭に向かって、殻と身の間に串を刺す。

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料理

世界的に広く魚料理に使われている魚としては、ニシン、イワシ、サケ、マス、ヒラメ、シタビラメ、サバ、マグロ、ウナギ、コイ、エビ、それにカキ、ハマグリ、アサリなどの貝類がある。種類を多く食べているのは、なんといっても日本で、外国であまり広く食べられていない、イカ、タコのようなものまで料理にしている。

 魚料理の形態としては、なま物、和(あ)え物およびサラダ、焼き物、煮物、ゆで物、揚げ物、汁物、蒸し物、漬物などのほか、加工品の料理もある。

 なま物は日本独特の調理法で、刺身がその代表的なものである。刺身には、包丁さばきをみせる各種のつくりや姿づくり、生けづくり、洗い、湯ぶりなどがあり、生きたまま食べるおどり食いといったものもある。

 和え物では、なまや、さっと湯通しした材料、あるいは酢じめした材料を調味料で和える。特殊な郷土料理としては、ハモの皮とキュウリを和えるはもきゅう(大阪)があり、そのほかアカガイやげそ(イカの足)のぬたなどがある。サラダでは、酢じめした魚、場合によってはなま、スモークしたサケ、ゆでたカニ・イカ・エビなどを材料に、野菜などを取り合わせてドレッシングで和える。

 焼き物には、日本料理では塩焼き、照焼き、蒲(かば)焼き、つけ焼き、ゆうあん焼き(ユズを加えたしょうゆのたれに魚をつけて焼いたもの)、黄身焼き、うに焼き、さんしょう焼き、みそ焼きなどがあり、単に調味料なしで焼く素焼き、あるいは白焼きなどもある。

 またその形態からの呼び名もある。姿焼き、頭だけのかぶと焼き、エビを殻付きのまま焼く鬼殻(おにがら)焼き、開いた形からのすずめ焼き、ウナギなどをゴボウに巻く八幡(やわた)巻きなどである。特殊なものとしては、杉板に挟んで焼く板焼き、炭火の周りで串に刺してゆっくりと焼き上げる浜焼きあるいは日ぼかしなどもある。洋風のものとしてはムニエルや、オーブンでチーズやナッツなどをつけて焼くものなどがある。

 煮物は、日本料理の主力の一つで、煮魚がその代表的なものである。新鮮な魚を使うことがよい煮魚をつくるポイントで、生臭み消しにショウガなどが使われる。煮魚の種類としては、通常のもののほかに、あらだき、みそ煮、白煮、おろし煮、沢煮、酢煮、やわらか煮、揚げ煮など、形からの名称としては、具足煮、かぶと煮、印籠(いんろう)煮などが、そのほか、飴(あめ)煮、甘露煮、時雨(しぐれ)煮など加工品的なものもある。中国料理では炒(いた)め煮が多く、油でよく炒めたのちスープなどを加えて煮る形態のものが多い。西洋料理ではソースで煮込むものが多く、ワイン煮、トマト煮、クリーム煮、酢煮などがある。

 ゆで物は、西洋料理がかなりよく用い、これにソースをかけて供することが多い。日本料理では、京都のはもちりなどのほか、タイの皮の湯びきなど、刺身的に用いられるものが主である。

 揚げ物では、フライ、てんぷら、から揚げなどがあり、白身魚ではフリッターなどがある。から揚げでは、メイタガレイのから揚げ、カニの甲羅(こうら)揚げなどがよく食べられる。また、かき揚げの材料として、小魚やエビ、貝柱などが用いられる。

 汁物では、みそ汁、吸い物、潮(うしお)汁、特殊なものとしては鯉こくがあり、外国のものとしてはブイヤベースなどがある。中国料理では魚のスープは数多い。魚は鍋(なべ)料理にも多く使われ、ちり鍋、魚(うお)すき、沖すき、カキの土手鍋、フグのてっちりなどが有名である。

 蒸し物は主として西洋料理によく用いられ、蒸した白身の魚に各種のソースを添えることが多い。また、日本料理としては、レモン蒸し、ゆず蒸しなど柑橘(かんきつ)類の香りを使った蒸し物がよくつくられる。これは魚の生臭み消しに目的があるようである。貝ではアサリの酒蒸しなどがある。

 漬物としては、みそ漬け、溜(たま)り漬け、酢漬け、塩漬け、発酵させたものでは塩辛などがある。このほか、魚の加工品も料理によく使用される。練り製品ではおでんなどに、また和え物にも使用される。みりん干し、うす塩干し、へしこ(イワシ、サバなどを米糠(こめぬか)と塩で漬けたもの)、素干し、目刺しなどがあり、いずれも簡単に焼いて食する。素干しの代表的なものはごまめで、正月料理の田作りになる。このほか各種の缶詰も魚料理の材料としてよく用いられる。ツナ缶、サバ缶、カニ缶、サケ缶、アサリ缶などがその代表的なものである。

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出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の魚料理の言及

【フランス料理】より

… 日本でフルコースと呼ばれるフランス(西洋)料理の正餐(せいさん)(ディナー)の献立を,出される順に説明すると次のようになる。(1)オードブル,(2)スープに,(3)魚料理が続く。魚そのものが淡白なので,調理法,ソースなどでさまざまな変化がつけやすい。…

※「魚料理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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