日本大百科全書(ニッポニカ) 「魚類/主要用語解説」の意味・わかりやすい解説
魚類/主要用語解説
ぎょるいしゅようようごかいせつ
*印は、別に本項目があることを示す。
また⇒印は、この用語集における関連用語、または解説をつけている用語を示している。
脂びれ(あぶらびれ) adipose fin
背びれと尾びれの間、ときに臀(しり)びれの前の体の正中線にある条(すじ)のない膜状のひれ。サケ類、ナマズ類、ハダカイワシ類など、分類上、下等なグループにある。
咽頭歯(いんとうし) pharyngeal tooth
のどの中の咽頭骨(いんとうこつ)の上にある歯。とくにコイ科魚類によく発達し、食物をかみ砕く働きをする。
ウェーバー器官(ウェーバーきかん) Weberian apparatus
コイ科やナマズ科の魚にあり、最前部の背骨から分かれた3、4個の骨片で、うきぶくろと内耳を連結する。
腋(えき) axil
主として胸びれの基部の内側の部分をいう。
えら ⇒外鰓(がいさい) ⇒鰓弓(さいきゅう)
黄化(おうか) xanthochroism
黒い色素が欠損し、体色が鮮黄色を呈すること。
外鰓(がいさい)* external gill
体表に出た樹枝状のえらをいう。
外部骨格(がいぶこっかく) exoskeleton
鱗(うろこ)や鰭条(きじょう)、骨板など体表にある骨格をいう。
眼窩(がんか) orbit
眼球を入れている頭部のくぼんだ部分。大きさや位置は左右対称的であるが、カレイ・ヒラメ類では著しく不相称となり、目のない側では退縮することがある。
眼下管(がんかかん) infraorbital canal
目の下部を走る側線管をいう。
眼下骨(がんかこつ) infraorbital bone
目の下半分を包囲するように一列に並んだ小骨。普通、数個前後からなる。
眼上棘(がんじょうきょく) supraorbital spine
目の直上部にあたる頭骨にある棘(とげ)をいう。
環椎(かんつい) atlas
最前の脊椎骨(せきついこつ)で、頭骨に接する骨をいう。
擬鰓(ぎさい) pseudobranch
普通のえらと異なり、主鰓蓋骨(しゅさいがいこつ)(えらぶた)の内面になかば埋まっている小さいえらをいう。
鰭褶(きしゅう) finfold
胚(はい)や幼生にある膜状のひれ。発育の初期の段階で消失し、普通のひれが発達する。
鰭条(きじょう) fin ray
背びれ、尾びれ、臀びれ、胸びれ、腹びれなどを構成する棘(とげ)(棘(きょく)ともいう)や軟条の総称。
鰭膜(きまく) fin membrane
鰭条の間を連結する膜状物をいう。
吸盤(きゅうばん) sucker
吸着用の器官。ハゼ類、ウバウオ類、クサウオ類は腹びれが、コバンザメ類では背びれが変化したものである。
胸位(きょうい) thoracic
胸びれ起部の直下付近の部位をいい、それより後方を腹位という。
峡部(きょうぶ) isthmus
左右の鰓孔(さいこう)に挟まれた頭部の腹面の部位をいう。
筋節(きんせつ) myomere, myotome
膜によって狭くくぎられた一つ一つの筋肉の節。この数は幼生の分類にとくに重要である。
躯幹部(くかんぶ) trunk
大部分の内臓諸器官を包み込んだ体の中央部。外見的には鰓蓋の後端から肛門(こうもん)までをいう。
計数形質(けいすうけいしつ) meristic character
鰭条数や鱗数、脊椎骨数など、数で表される形態上の特徴をいう。
肩帯(けんたい) shoulder girdle
胸びれを支える骨格系をいう。
喉位(こうい) jugular
のどの付近をいい、とくに腹びれが胸びれ基部よりも前方に位置するときに用いる語。
孔器(こうき) pit organ
体表に点在する側線器官。その配置や数が種類によって異なり、ハゼ類やある種のコイ科の魚類などでは、分類上の重要な特徴となる。
溝条(こうじょう) groove
硬骨魚類の鱗の中心から放射状または前後に平行に並ぶ細い溝のこと。鱗をしなやかにする働きがある。
後頭部(こうとうぶ) occiput
目の後縁より後方の頭の背面をいう。
婚姻色(こんいんしょく)* nuptial color
産卵期の成魚に出現する特別な色合い。とくに淡水魚に多く出現し、頭部や腹面が赤みを帯びる。雄に著しく、雌ではあまり発現しない。
鰓弓(さいきゅう) gill arch, branchial arch
鰓腔(さいこう)の中にある数対のえら器官。1対ごとに、前縁に多くの鰓耙(さいは)、後縁に多数の鰓弁がある。
鰓腔(さいこう) gill cavity, branchial cavity
えらを収容している室で、口腔の後方にある。
鰓耙(さいは) gill raker
鰓弓の前縁に並ぶ骨質の突起物。口から吸い入れた水より餌(えさ)を漉(こ)し集める働きをし、とくに第一鰓弓の鰓耙が重要な働きをする。
鰓弁(さいべん) gill filament
鰓弓の後縁から出ている細長い弁状物。その表面でガスの交換をするが、よく泳ぐ魚では表面積が広い。
鰓膜(さいまく) gill membrane, branchiostegal membrane
鰓孔近くにあって、その開閉に関与する膜をいう。
脂瞼(しけん) adipose eyelid
眼球の表面を覆っている脂肪様の膜状物をいう。
耳石(じせき) otolith
内耳にある石灰化したいくつかの固形物。とくにもっとも大きな扁平石(へんぺいせき)だけをさすことが多い。
縦扁(じゅうへん) depressed
エイ類やアンコウ類の体のように背腹方向に平たいことをいう。
瞬膜(しゅんまく) nictitating membrane
ある種のサメ類にあるまぶた。餌をくわえた瞬間に広がって目を閉じる。
楯鱗(じゅんりん) placoid scale
サメ・エイ類の鱗。歯と同じ構造をしていて、遊泳中に水流を細分化して水の抵抗を少なくする働きがある。
小離鰭(しょうりき) finlet
背びれや臀びれの後方に独立して並ぶ小さなひれ。副びれともいい、遊泳中に水の流れを調節して、水の抵抗を少なくする働きがある。
食道嚢(しょくどうのう) esophageal sac
食道に対(つい)となって発達した嚢状のもの。内面には歯のような堅い小突起が並ぶ。
触毛(しょくもう) cirri
皮膚にある短い毛状の突起をいい、触覚を受容する。
唇褶(しんしゅう) labial fold
ある種のサメ類にある口角部の皮膚のしわをいう。
伸出性(しんしゅつせい) protractile
餌をとるとき、口が急に前方に伸び出すことをいう。
生殖突起(せいしょくとっき) genital papilla
肛門付近にある乳頭状の突出物。カサゴ、カジカ、ネズッポなどのグループにあり、雄でよく発達する。
截形(せっけい) truncate
尾びれの後縁が上下に直線状となった状態をいう。
接合歯(せつごうし) soldered teeth
互いに癒合してくちばし状になったあごの歯をいう。
前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ) preoperculum
鰓蓋を形成する骨のうち、もっとも前方にある骨。後縁に多少の棘があり、分類上重要な形質となる。
総排出孔(そうはいしゅつこう) cloaca
消化管、生殖管および輸尿管が合して体表に開いた孔(あな)をいう。
側線(そくせん)* lateral line
体表を走る感覚器官。水の振動、低周波音を感じて中枢部に伝える。数や走り方は分類上の重要な形質となる。
側扁(そくへん) compressed
タイ類のように体が左右に薄くなった状態をいう。
体盤(体板)(たいばん) disc
頭や躯幹(くかん)に胸びれが癒合してできた板状体をいう。
対鰭(ついき) paired fin
胸びれと腹びれの総称。水平鰭(き)ともいう。
頭鰭(とうき) cephalic fin
胸びれから分離し、頭の前縁にあるひれをいう。
内鼻孔(ないびこう) internal naris
鼻腔から口腔へ開いた孔。外鼻孔に対して用いる語。
内部骨格(ないぶこっかく) endoskeleton
頭蓋骨、脊椎骨、肩帯、腰帯など体内の骨格系をいう。
軟条(なんじょう) soft ray
各ひれを支える条(すじ)状の分節した鰭条をいう。
二叉(にさ) bifid
鰭条や歯、皮弁などが、基部で1個、先端で2個に分かれることをいう。
鼻管(びかん) nasal tube
頭の表面に突出した小管で、その先端に鼻孔が開く。
尾椎(びつい) caudal vertebra
尾部にある脊椎骨の総称。肋骨(ろっこつ)がない。
尾部(びぶ) tail
肛門より後方の体部。ただし尾びれは含まない。
尾柄(びへい) caudal peduncle
臀びれと尾びれの両基底間の部位をいう。
腹位(ふくい) abdominal
腹びれが、胸びれの基底より著しく後方にある場合に用いる語。
腹椎(ふくつい) abdominal vertebra
躯幹部にある脊椎骨の総称。
吻(ふん) snout
目より前方、口より背方の部分をいう。
噴水孔(ふんすいこう) spiracle
目より後方にある呼吸用の水を取り入れる孔をいう。
頬(ほお) cheek
目の下部から鰓蓋前部にわたる部位をいう。
膜骨(まくこつ) membrane bone
薄い骨で、軟骨と無関係に出現した骨をいう。
無管鰾(むかんひょう) physoclistous air-bladder
消化管に連結する小管(気道)をもたないうきぶくろをいう。
有管鰾(ゆうかんひょう) physostomous air-bladder
小管で消化管と連結したうきぶくろをいう。
幽門垂(ゆうもんすい) pyloric caeca
胃と腸との境にある指状の器官。消化酵素を出し、消化作用がある。その数は分類上の重要な形質となる。
遊離棘(ゆうりきょく) free spine
ほかの棘から独立して位置する棘をいう。
腰帯(ようたい) pelvic girdle
腹びれを支持する骨格をいい、多くは肩帯の下部に接する。
隆起線(りゅうきせん) ridge
硬骨魚類の鱗の表面に環状に並ぶ細かい線。その粗密が成長と関係し、年輪を形成する。
両眼間隔(りょうがんかんかく) interorbital width
頭の背面から見た両眼の最短距離をいう。
稜鱗(りょうりん) scute
棘または堅くて角張った突起のある鱗。アジ類では側線上に、多くのイワシ類では腹面にある。
鱗鞘(りんしょう) scaly sheath
背びれや臀びれの基底付近で鱗で覆われた部位をいう。
涙骨(るいこつ) lachrymal
目の前下方にある小骨。その後方にいくつかの眼下骨がある。
レプトセファルス leptocephalus
ウナギ類、カライワシ類などの葉形幼生のこと。