鰍沢(落語)(読み)かじかざわ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鰍沢(落語)」の意味・わかりやすい解説

鰍沢(落語)
かじかざわ

落語。幕末に三遊亭円朝がつくった三題咄(さんだいばなし)で、その三題は「小室山(こむろさん)の御封(ごふう)、玉子酒、熊の膏薬(こうやく)」という。『鰍沢雪の夜噺(よばなし)』の演題芝居咄としても演じられたが、その方法は8代目林家正蔵(彦六)が昭和の時代に伝えた。身延山(みのぶさん)参詣(さんけい)の新助が雪の道に行き暮れて民家に泊る。そこにいた元吉原の花魁(おいらん)で、いまはお熊という女に玉子酒を飲ませてもらって隣室で休む。お熊が酒の買い足しに出たあとへ亭主で熊の膏薬売りの伝三郎が戻り、玉子酒の残りを飲んで苦しむ。お熊が自分の金を取るために玉子酒の中に毒薬を入れたことを知った新助は、外へ転がり出て小室山の御封(毒消しの護符)を飲んで逃げる。お熊が追っかけて放った鉄砲の玉が岩角に当たる。鰍沢の崖から川に落ちた新助が、筏(いかだ)の材木につかまって「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」を唱えていたので「お材木(お題目)で助かった」。落ちは拙劣だが、この作の背景には江戸庶民の信仰生活があり、史料的価値もある。

[関山和夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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