鱗木類(りんぼくるい)(読み)りんぼくるい(英語表記)lepidodendrids

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鱗木類(りんぼくるい)」の意味・わかりやすい解説

鱗木類(りんぼくるい)
りんぼくるい
lepidodendrids

石炭紀に繁栄した、シダ植物ヒカゲノカズラ類に属する木本性の植物群。鱗木類(うろこぎるい)ともいう。沼沢地に森林を形成し、同時代産の石炭の主原料の一つとなった。現生ミズニラ類にもっとも近縁。最大のものは茎の直径2メートル、高さ40メートルに達した。中生代ヒカゲノカズラ類であるプレウロメイア類を経て徐々に小形化が進み、現在のミズニラ類となったという考えと、両者は共通の祖先をもつが古生代からすでに別系統として存在したという考えとがある。

 茎は先端近くで二叉(にさ)分枝を繰り返し、樹冠を形成する。葉は細長い針型で、維管束は1本しかない小葉であるが、長いものは1メートルに達した。落葉後は茎の表面に葉痕(ようこん)とよばれる模様が残り、その様子が鱗を並べたようなので、鱗木(lepido=鱗、dendron=木)の名がある。葉痕が螺旋(らせん)配列し、縦に長い菱形となるレピドデンドロンLepidodendron、横に幅広い菱形となるレピドフロイオスLepidophloios、六角形で縦に列をつくるシギラリアSigillaria(封印木(ふういんぼく))などがある。地下部は茎のように二叉分枝しながら多数の根を生ずる担根体という特殊な器官で、スティグマリアStigmariaとよばれる。茎は原生中心柱をもち、二次成長するが材の発達は悪く、最大でも幅数センチメートル程度である。巨大な樹幹の大部分は、コルク形成層の分裂に伴う肥大成長によって、茎の外周に二次的に発達した樹皮に相当する部分(周皮)で占められる。

 生殖器官は、現生のヒカゲノカズラの生殖器官に似た胞子嚢穂(のうすい)レピドストローブスLepidostrobusを形成する。大きいものは長さ1メートルにもなり、胞子には異形胞子化がみられる。異形胞子化がとくに進んだレピドカルポンLepidocarponでは、大胞子嚢が栄養葉によって包み込まれ、そのなかで受精が行われて胚(はい)が形成される。この構造は種子植物の種子と対比できるものである。

 鱗木類は中国や朝鮮から多数化石がみつかるが、日本では石炭紀の化石産地がほとんどないこともあって、未産出である。しかし、岩手県、高知県、熊本県などの後期デボン系からは、鱗木類の祖先とされる古生ヒカゲノカズラ類のレプトフロエウムLeptophloeumが産出する。

[西田治文]

『岩槻邦男・馬渡峻輔監修、加藤雅啓編『バイオディバーシティ・シリーズ2 植物の多様性と系統』(1997・裳華房)』『西田治文著『植物のたどってきた道』(1998・日本放送出版協会)』『岩槻邦男・加藤雅啓編『多様性の植物学2 植物の系統』(2000・東京大学出版会)』


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