(読み)スズキ

デジタル大辞泉 「鱸」の意味・読み・例文・類語

すずき【×鱸】

スズキ目スズキ科の海水魚全長約90センチ。体は細長く、側扁する。背側は灰青色で、腹側銀白色幼魚には背部と背びれとに小黒点がある。北海道以南から東シナ海に産し、夏季には河川に入る。出世魚の一で、セイゴフッコ・スズキと呼び名が変わる。美味で、夏秋が旬。 秋》「釣上げし―の巨口玉や吐く/蕪村

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精選版 日本国語大辞典 「鱸」の意味・読み・例文・類語

すずき【鱸】

〘名〙 スズキ科の海産魚。全長約一メートルに達する。体は細長い紡錘形。口は大きく、下あごは上あごより突出する。背部は灰青色で腹部は銀白色。幼魚では体側や背びれに黒褐色の小点が散在。冬季、湾口部で産卵する。幼魚は春から夏に湾内、さらに河口部などに侵入する。一部は河川をさかのぼる。親魚も春から夏に湾内に入り、潮通しのよい岩礁域に群れる。ともに、秋の水温の低下とともに沖の深みから湾口に移動し、越冬する。動物食で魚類甲殻類などを丸のみにする。北海道から九州までの沿岸に分布する。釣り魚として人気がある。旬は夏で、塩焼き、刺身などにする。稚魚を「せいご」、少し成長したものを「ふっこ」といい、成育につれて呼称が異なるのでボラ、ブリなどとともに出世魚と呼ばれる。《季・秋》
古事記(712)上「栲縄の千尋縄打ち延へ、釣為し海人の、口大の、尾翼鱸〈鱸を訓みて須受岐と云ふ〉」

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改訂新版 世界大百科事典 「鱸」の意味・わかりやすい解説

鱸 (すずき)

平曲の曲名。平物(ひらもの)。前半はフシ物,後半は拾イ物の曲節。前田流平曲の基本的譜本である《平家正節(へいけまぶし)》の巻頭にすえられた曲。めでたい内容の短い曲で,しかも平曲を二分するフシ物・拾イ物の両要素を併せ備えているので,初入門曲として適当と考えられていたのであろうか。下記のように語られる。

 平氏で初めて殿上(てんじよう)を許された忠盛は,和歌の道にも優れ,鳥羽上皇の質問にとっさに和歌で答えたものが《金葉集》に採られたし,また院に仕えていた忠盛と相愛の女も,機知に富んだ和歌を詠んだ(〈上歌(あげうた)・サシ声・初重(しよじゆう)等〉)。忠盛の死後は清盛が跡を相続し,保元・平治の乱で戦功を立てた。そのために正三位に叙され,続いて参議,納言,大臣と短期間に昇進し,ついに太政大臣にまでなった(〈拾イ〉)。太政大臣は天皇の師範,四海の儀表とされ,適任者がないときは欠いてもよいと定められた重い官職だが,清盛が天下を握っていたので異論は起こらなかった(〈三重〉)。この平家の繁栄は熊野権現の加護によるものだという。清盛がまだ安芸守だったころ,伊勢から船で熊野へ参詣したが,そのとき大きな鱸が飛び込んだ。清盛は,周の武王の船に白魚(はくぎよ)が躍り入ったという伝説と同じ吉兆だと言って,本来は精進して過ごす参詣の途中であるにもかかわらず,その鱸を調理して自分も食し,人々にも食べさせた。このことのためか,平家一門はめでたい繁栄を遂げたのである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「鱸」の解説

鱸 (スズキ・セイゴ)

学名:Lateolabrax japonicus
動物。スズキ科の海水魚

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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