鳥兜(読み)トリカブト

デジタル大辞泉 「鳥兜」の意味・読み・例文・類語

とり‐かぶと【鳥×兜/鳥甲】

舞楽襲装束かさねしょうぞくに用いるかぶり物。鳳凰ほうおうの頭をかたどり、厚紙金襴きんらん紅絹もみなどをかぶせて作る。曲により形式・色彩などが異なる。
キンポウゲ科多年草。高さ約1メートル。葉は手のひら状に深く裂けている。秋、深紫色の冠状の花が集まって咲く。また、ハナトリカブトなどを含め、トリカブト属の総称。塊根は猛毒であるが、漢方では主根烏頭うず側根附子ぶしといい、神経痛リウマチなどの鎮痛薬に用いる。かぶとぎく。かぶとばな。 秋》荒寥こうりょうと熊の湯ちかき―/秋桜子

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「鳥兜」の意味・わかりやすい解説

鳥兜 (とりかぶと)

舞楽および能のかぶり物。舞楽では《鳥甲》とも書く。形状は鳳凰(ほうおう)の頭をかたどったとされ,頂が前方にとがり,錏(しころ)が後方に突き出したもの。舞楽の鳥兜は厚紙を素材とし,その表に赤・緑・紫の金襴を張り,縁を組紐でとじ,側面に丸に五七の桐の透し彫を施した円形金銅金具をつけ,八つ打ちの紐をあご下で結ぶ。裏には紅絹(もみ)が張ってある。管方(かんかた)の常装束として用いるほか,《万歳楽》《承和楽》《北庭楽》《甘州》《裹頭楽(かとうらく)》《一曲》《振鉾(えんぶ)》《延喜楽》《仁和楽》などに用いる。能の鳥兜も舞楽のものと同型で錦で作られる。《白髭(しらひげ)》《大社(おおやしろ)》《道明寺》《梅枝(うめがえ)》《富士太鼓》などのシテに用いる。民俗芸能の中にも神楽,王の舞などに鳥兜を使用するものがあり,《三十二番職人歌合》に千秋万歳が鳥兜をつけて舞っている姿がある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「鳥兜」の解説

鳥兜 (トリカブト)

学名Aconitum chinense
植物。キンポウゲ科の多年草,園芸植物

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の鳥兜の言及

【舞楽装束】より

…(12)烏皮沓(うひぐつ∥くりかわくつ) 曲目によって牛革で作られた種々の沓があり,《胡飲酒》《新靺鞨(しんまか)》《採桑老》,また〈久米舞〉等で用いられる。(13)頭装 兜(甲)(かぶと)は通常多く用いるものに鳥兜(甲)(とりかぶと)がある。厚紙に金襴を張り,鳳凰の頭にかたどったといわれる華麗な甲で裏は紅絹,左方,右方の別がある。…

※「鳥兜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android