鶏足寺(読み)けいそくじ

精選版 日本国語大辞典 「鶏足寺」の意味・読み・例文・類語

けいそく‐じ【鶏足寺】

栃木県足利市小俣にある真言宗豊山派の寺。山号は仏手山。大同四年(八〇九)、藤原鎌足の子定恵の創建と伝えられる。天慶三年(九四〇)、平将門の乱調伏の功により勅願寺となる。

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日本歴史地名大系 「鶏足寺」の解説

鶏足寺
けいそくじ

[現在地名]足利市小俣町

北に屹立する一乗いちじよう山を背に、山懐に抱かれた山麓に位置する。仏手山金剛王院と号し、真言宗豊山派。本尊は釈迦如来。「鶏足寺来歴略記」によると、大同三年(八〇八)石尊せきそん山が鳴動した時、小野寺おのでら(現下都賀郡岩舟町)に住していた円仁が山に登り、石仏の出現を確認、このことを最澄に伝えた。平城天皇の命を受けて下向した橘左中弁秀勝が事実を再確認して報告したため、同四年四月八日奈良東大寺の定恵が勅請を受け、鳴山の石仏を勧請して銅製釈迦如来を造立、これを本尊として寺を創建、一乗山世尊寺一乗坊と名づけたという。仁寿元年(八五一)円仁によって現在地に移転し現山号に改称、天台宗寺院としての基礎を確立した。現在、一乗山中の「寺の窪」の地に一乗坊跡と推測される礎石遺存する。平将門の乱に際して当寺で調伏修法が行われ、祈祷壇上の将門の土首に三足の鶏の爪跡がつき、童子が現れて将門の死を予告した。

鶏足寺
けいそくじ

[現在地名]木之本町古橋

真言宗豊山派。己高山観音寺の別院の一つ。寛喜三年(一二三一)三月四日の年紀のある滋賀県高月町井口いのくちの日吉神社鐘銘に「己高山椎鐘」とあり、もとは鶏足寺の旧鐘であった。浅井あざい伊香いか両郡中の氏人等の結縁により富永とみなが円満えんまん寺で鋳造されている。かつては己高こだかみ山中にあったが、山上堂宇は荒廃し、昭和初め山下の現在地に移転した。隣地に昭和三八年(一九六三)己高閣、平成元年(一九八九)世代閣と称する収蔵庫が建てられ、鶏足寺宝物を中心に己高山諸寺の仏像を収納している。

鶏足寺
けいそくじ

[現在地名]益子町益子

新町しんまちの南側山麓にあり、太平山自性院と号する。かつては常陸国泰寧たいねい(現茨城県新治郡八郷町)の末寺で曹洞宗、本尊は迦葉尊者・十一面観音。寺伝では大永二年(一五二二)の創建で、高塩伊勢守政平が開基、天海舜政の開山という。近世は朱印地一五石余を有していた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鶏足寺」の意味・わかりやすい解説

鶏足寺
けいそくじ

栃木県足利(あしかが)市小俣(こまた)町にある寺。真言教団に属し、仏手山金剛主院と号する。寺の梵鐘(ぼんしょう)に「朱雀(すざく)天皇御願所」とあり、定恵(じょうえ)が開創。851年(仁寿1)円仁(えんにん)が釈迦(しゃか)堂ほか8院を増建した。本尊は五大明王。平将門(まさかど)の乱にあたっては霊験(れいげん)が顕著で、939年(天慶2)俵藤太秀郷(たわらとうたひでさと)が住持の定有(じょうゆう)に将門調伏の祈祷(きとう)をさせたところ、祈祷所の将門の土首に鶏の足跡がついたといわれ、寺号の由来となる。文永(ぶんえい)年間(1264~75)に高野山(こうやさん)金剛三昧院(こんごうざんまいいん)の頼賢(らいけん)の法弟良賢(りょうけん)(慈猛上人(じもうしょうにん))を中興の祖と仰ぎ、真言宗慈猛流の根本道場となった。室町時代には鑁阿寺(ばんなじ)とともに鶴岡八幡宮(つるがおかはちまんぐう)の別当職を兼ねた。戦国時代に上杉謙信(けんしん)の兵火で炎上し、1591年(天正19)に徳川家康が復興した。第二次世界大戦後、豊山(ぶざん)派より独立。寺宝の太刀(銘力王、拵(こしらえ)は室町初期の装刀法)、銅印、梵鐘は国指定重要文化財。

[大鹿実秋]

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百科事典マイペディア 「鶏足寺」の意味・わかりやすい解説

鶏足寺【けいそくじ】

栃木県足利市にある真言宗豊山派の寺。809年奈良東大寺の定恵(じょうえ)が,石尊(せきそん)山が鳴動して出現した石仏で造立した釈迦如来を本尊として一寺を創建。851年円仁が現在地に移し天台宗とした。平将門(たいらのまさかど)の乱の時,当寺で行われた調伏(ちょうぶく)修法の際,祈祷壇上の将門の首に鶏の爪痕がつき,将門の死を予告したことから現寺号に改称という。〈鶏足寺印〉の銅印・弘長(こうちょう)3年(1263年)銘の梵鐘・〈力王〉銘の大刀(付属黒漆太刀拵)は重要文化財。

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デジタル大辞泉プラス 「鶏足寺」の解説

鶏足(けいそく)寺

栃木県足利市にある真言宗の寺院。山号は仏手山、院号は金剛主院。本尊は五大明王。809年に定恵が創建した世尊寺が基。現在の寺号は、平将門の乱で将門調伏の祈祷が行われた際、祈祷所の将門の土首に鶏の足跡がついたとされることにちなむ。

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