鸚鵡籠中記(読み)おうむろうちゅうき

改訂新版 世界大百科事典 「鸚鵡籠中記」の意味・わかりやすい解説

鸚鵡籠中記 (おうむろうちゅうき)

日記。朝日定右衛門重章著。37冊。1684年(貞享1)8月29日から1717年(享保2)12月末日までの34年間にわたる記録。尾張藩士であった著者をとりまく日常万般の事象公私にわたって体験,伝聞をまじえて記されている。とくに芸能関係の記事に詳しく,名古屋はもとより京,大坂江戸などの興行記録,見聞の体験が書き留められ,しかもその信憑性は高い。本書によって元禄期(1688-1704)を中心とした芸能史のかなりの部分が書き変えられた。長く徳川林政史研究所に所蔵され,翻刻はされていなかったが,1965-67年《名古屋叢書続編》(9~12)に活字化された。
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日本歴史地名大系 「鸚鵡籠中記」の解説

鸚鵡籠中記
おうむろうちゆうき

三七冊 尾張藩士朝日重章著

成立 享保二年

分類 日記

原本 徳川林政史研究所

解説 貞享元年から享保二年までの三四年間に及ぶ日記。中級武士としての自家の生活、尾張藩内外の秘事世評、市井出来事風俗推移、日々の天候、演芸関係の記事など記述範囲がきわめて広い。江戸中期の史料として貴重。

活字本 名古屋叢書続編巻九―一二

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百科事典マイペディア 「鸚鵡籠中記」の意味・わかりやすい解説

鸚鵡籠中記【おうむろうちゅうき】

名古屋藩士朝日重章(しげあき)の日記。37冊。原本は徳川林政史研究所蔵。1684年−1717年にわたり,中級の武士であった著者をとりまく日常万般の事象が体験・伝聞をまじえ記されている。芸能関係に詳しく,名古屋はもとより京・大坂・江戸などの興業記録や見聞の体験記は,貴重な史料とされる。《名古屋叢書続編》所収

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「鸚鵡籠中記」の解説

鸚鵡籠中記
おうむろうちゅうき

尾張国名古屋藩士朝日定右衛門重章(しげあき)(1674~1718)の日記。37冊。1684年(貞享元)8月29日から1717年(享保2)12月末日を記録。書名鸚鵡口真似のようにそのまま書いたという意味。名古屋の町人や世間のようすなどについて詳細に記録しており,江戸・京都,他藩のことにも及ぶ。名古屋藩内部のさまざまな事柄,藩主・大奥の秘事などの裏面記録も多いのが特徴。「名古屋叢書」所収。

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世界大百科事典(旧版)内の鸚鵡籠中記の言及

【護国女太平記】より

…5代将軍徳川綱吉が柳沢吉保の子吉里をわが子と信じて,6代将軍にしようとしたのを,正室鷹司氏信子が夫綱吉を殺害,未然に防いで自害したのが書名の由来である。実際には麻疹と疱瘡で没したにもかかわらず,相次いで急逝したため種々の風説が当時よりあり(《鸚鵡籠中記》),それらを核に,《日光かんたんの枕》《増補日光邯鄲枕》《日光霊夢記》《元宝荘子》《宝永太平記》などの実録体小説が出現した。《増補日光邯鄲枕》では,井伊掃部頭を善玉,柳沢吉保を悪玉としているが,その作者自序には井伊家に仕えていたとある。…

【酢の物】より

…魚貝類,野菜,海藻などを材料にして,合せ酢をかけたり,あえたりする料理。古代から行われていた(なます)から分化して,室町時代以降〈酢あえ〉〈あえまぜ〉〈酒浸(さかびて)〉などと呼ばれていた料理を包括した呼称で,料理書では《料理早指南》第4編(1804)などに見えるが,一般ではより古くから使われていた言葉のようで,尾張藩士朝日重章の《鸚鵡籠中記(おうむろうちゆうき)》元禄13年(1700)8月14日条に〈醋物〉と見えている。ちなみに,〈酢あえ〉は野菜その他の精進物,〈あえまぜ〉は干魚などを材料とした場合の呼称で,〈酒浸〉は鮮魚をおろしてただちに酒に浸して鮮度の低下を防ぎ,供する直前に酒から出して膾にしたものをいった。…

※「鸚鵡籠中記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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