鼓室(読み)こしつ

精選版 日本国語大辞典 「鼓室」の意味・読み・例文・類語

こ‐しつ【鼓室】

〘名〙 脊椎動物の中耳の一器官で、鼓膜内耳との間にある空所。鼓室内には三個の耳小骨があり、鼓膜の振動を内耳に伝える働きがある。〔解剖辞書(1875)〕

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デジタル大辞泉 「鼓室」の意味・読み・例文・類語

こ‐しつ【鼓室】

中耳主体となる部分で、鼓膜内側にある空間耳小骨が収まっている。中耳腔。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鼓室」の意味・わかりやすい解説

鼓室
こしつ

鼓膜の内側にある中耳の主体となる部分で、側頭骨内に位置する不定形の狭い腔(くう)である。内腔は耳管を通じて咽頭(いんとう)鼻部の腔と交通しているため、鼓室には外部の空気が含まれている。鼓室が陰圧になると鼓膜の振動が制限されて一時的な難聴の原因となる。この場合、嚥下(えんげ)運動やあくびによって耳管が開通し、外気が鼓室に流入して難聴は回復する。鼓室内部には3個の耳小骨が連結し、鼓室外側壁(鼓膜)と内側壁との間にわたっていて、鼓膜に伝わった音の振動を内耳に伝える。鼓室腔は固有の鼓室と上方に広がった鼓室上陥凹との2部分からなり、鼓室上陥凹にはツチ骨頭とキヌタ骨体の部分が収まっている。腔全体は内・外壁、前・後壁、上・下壁で囲まれている。外壁は鼓膜に相当するが、内壁は骨性内耳の外側壁にあたる。上壁は室蓋(しつがい)壁とよび、側頭骨錐体(すいたい)前面の薄い骨板であって鼓室と頭蓋腔とを隔てている。下壁は鼓室の底にあたり、頸(けい)静脈壁とよぶ薄い骨からできており、内頸静脈が、中を通っている頸静脈窩(か)と鼓室とを隔てている。前方は耳管鼓室口を通って耳管に連なる部分で、後方は乳突洞口を通って乳突洞から後下方乳突蜂巣(ほうそう)につながっている。乳突蜂巣は側頭骨乳様突起内の細かく分かれた小腔の集まりで、含気蜂巣ともよぶ。中耳の炎症が鼓室上陥凹や乳突蜂巣まで広がると慢性中耳炎となり、治りにくい。

[嶋井和世]


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百科事典マイペディア 「鼓室」の意味・わかりやすい解説

鼓室【こしつ】

鼓膜の内方の骨に取り囲まれた腔所。中耳の主体。扁平で前後に長く,内面は粘膜でおおわれ,中に3個の耳小骨があって,鼓膜と内側壁にある内耳(前庭窓)との間をつなぐ。鼓室の前下方から耳管と呼ぶ管が出て咽頭(いんとう)側壁に開き,これによって鼓室内の空気は外界に通じる。→

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世界大百科事典(旧版)内の鼓室の言及

【中耳】より

…魚類では鰓孔や呼吸孔は開通するが,四足動物では開通せず,これを鼓膜がおおっている。したがって,中耳の空間(鼓室)は軟骨魚類の呼吸孔と相同のもので,もとは原始魚類の鰓孔だったのである。両生類,爬虫類,鳥類の単一の耳小骨(耳小柱)は哺乳類では〈あぶみ骨〉になっている。…

【耳】より

…内耳ということばは,周囲の骨質なども含めたこれらの諸構造の全体を指すもので,魚類の耳はこれだけでできている。次に,内耳の外側に隣接した,空気の入っている中空の区域が中耳で,外壁をなす〈鼓膜〉,〈耳小骨(鼓室小骨)〉,耳小骨を収める空間である〈鼓室〉,鼓室腔を咽頭につなぐ〈耳管〉および周囲の諸組織から成っている。中耳は音の伝達に関与する部分であり,原則として四足動物の共有する特徴である。…

【鳴管】より

…哺乳類の喉頭に相当するが,喉頭とは形態も位置も異なる。多くの鳥類では,鳴管は気管が2本の気管支に分かれる分岐点に位置し(気管‐気管支型鳴管),気管下部の3~6個の骨環と気管支上部の数個の半環で鼓室tympanumと呼ばれる共鳴装置を形成する。鼓室内中央の気管の分岐点には骨片に支えられた振動膜があり,振動膜は気管支の入口,骨環の間,半環の内側にも存在する。…

※「鼓室」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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