《ファービアン》(読み)ふぁーびあん

世界大百科事典(旧版)内の《ファービアン》の言及

【ケストナー】より

…劇評,大道演歌風の文芸寄席(キャバレー)シャンソン,新即物主義のいわゆる“実用詩”を《世界舞台》などの雑誌や新聞に寄せた。《胴の上の心臓》(1928),《鏡の中の騒ぎ》(1929)など4詩集や,モラリストの物語《ファービアン》(1931)により,ワイマール時代の実相とその危険性を鋭く映し出し,好評を博した。しかし,彼の本質は啓蒙的であるが未来性を欠く知識人の憂鬱と絶望にあり,〈左翼メランコリー〉(ベンヤミン)という批判も受けた。…

【新即物主義】より

…すなわち,新即物主義の文学は,事実に即し事実そのものに語らせようとするが,19世紀の自然主義の客観的写実とは異なり,生の仮面をはぎながらも,その傷口を嘲笑やグロテスクでニヒリスティックにおおい隠そうとする,いわば知性主義によって貫かれていた。したがって,その代表的作品には,東は犯罪,中央は詐欺,北は貧困,西は淫乱の大都市ベルリンを舞台としたものが多く,再生を誓う前科者の一労働者の物語,デーブリーンの《ベルリン・アレクサンダー広場》(1929),小市民の憂鬱な生活を描いたH.ファラダの《安サラリーマン,さあどうする》(1932),ともにアウトサイダー的インテリ青年の悲劇的運命を戯画化したケストナーの《ファービアン》(1931)とケステンHermann Kesten(1900‐96)の《山師》(1932)などがあげられる。とりわけ《ファービアン》は,20年代末の犯罪,詐欺,貧困,ポルノなど大都会の退廃を即物的に描いたがゆえに〈アスファルト文学〉とも酷評されたが,主人公にみられるわざとらしいむとんちゃくさと一抹のロマン主義は,〈黄金の20年代〉に支配的な生活気分で,新即物主義の一面でもある。…

※「《ファービアン》」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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