《ブラフマ・スートラ》(読み)ぶらふますーとら

世界大百科事典(旧版)内の《ブラフマ・スートラ》の言及

【一元論】より

…この説を展開したのがベーダーンタ学派であるが,ブラフマンと万有との関係については種々の異説があった。5世紀前半に完成したとされる《ブラフマ・スートラ》では,ブラフマンは世界の質料因であると同時に,動力因,つまり最高主宰神でもあり,まったく自律的に世界を開展pariṇāmaすると説かれている。のちにシャンカラは,ブラフマンが世界を開展するのは無明avidyāによるのだとし,《ブラフマ・スートラ》のいわば実在論的一元論を,幻影主義的一元論(不二一元論)に置き換えた。…

【ジャイミニ】より

…この経典は,ジャイミニの名を冠せられて《ジャイミニ・スートラJaimini‐sūtra》,あるいは,12章より成っているので《十二章篇》とも称せられる。〈さてこれよりダルマ(聖典に命ぜられている義務,祭事)の探求が(開始される)〉で始まるその教説の一部は,姉妹学派であるベーダーンタ学派の根本経典《ブラフマ・スートラ》(5世紀前半ころに完成)の中で,その経典の作者とされるバーダラーヤナなど幾人かの学匠の教説と並んで,ジャイミニの名のもとに紹介され,批判されている。【宮元 啓一】。…

【ニンバールカ】より

…現在の南インド,アーンドラ・プラデーシュ州出身で,北インドのマトゥラー近傍のブリンダーバンを中心に活躍。主著は《ブラフマ・スートラBrahma‐sūtra》に対する注釈(《ベーダーンタパーリジャータサウラバVedāntapārijātasaurabha》)で,牧人クリシュナと愛人ラーダーの崇拝をベーダーンタ哲学によって基礎づけた。ブラフマンをビシュヌ神あるいは脇にラーダーを伴ったクリシュナと同一視し,ブラフマン,個我,物質世界はそれぞれ永遠の実在であるとした。…

【バーダラーヤナ】より

…生没年不詳。インド古来の伝統説によれば,インドで最も有力な哲学学派であるベーダーンタ学派の開祖であり,この学派の根本聖典《ブラフマ・スートラ》の著者とされる。しかし諸学者の研究によれば,彼は前1世紀ころ活躍したらしく,一方,現存の《ブラフマ・スートラ》は,おそらく400‐450年ころ,現在の形に編纂され,バーダラーヤナに帰せられたものと推定されている。…

【ブラフマン】より

…インド哲学の主流を成すベーダーンタ学派は,このブラフマンの考究を主要任務とするものとして成立した。その派の根本経典《ブラフマ・スートラ》は,ブラフマンを〈この世界の生起などの起こるもとのものである〉と定義し,宇宙の質料因でありかつ動力因であると規定し,これ以外の世界原因を否認した。ブラフマンは単なる中性的原理ではなく人格的存在とも考えられているようである。…

【ベーダーンタ学派】より

…前1世紀ころバーダラーヤナが活躍するが,彼は後にベーダーンタ学派の開祖と目されるにいたった。およそ700年にわたる多数の学者の活動を背景に,おそらく400~450年ころ,この派の根本聖典《ブラフマ・スートラBrahmasūtra》が編纂され,明確な形態を備えた哲学学派として,インド古典文化の黄金時代,グプタ朝の思想界に登場した。 《ブラフマ・スートラ》は,当時有力であった,純粋精神プルシャと根本物質プラクリティの二元論を説くサーンキヤ学派に対抗して,ウパニシャッドの中心論題であるブラフマンを宇宙の唯一絶対の究極原因であるとして,一元論を展開した。…

【六派哲学】より

…この真理を聖典によって明らかに知るとき,人は解脱を得るのである。400~450年ころに現在の形に編纂された《ブラフマ・スートラ》(バーダラーヤナ作と伝えられる)が根本経典。この学派の説は一般に一元論であるが,根本経典の解釈をめぐって,後世,シャンカラの不二一元論,ラーマーヌジャの制限不二一元論,バースカラの不一不異論などが展開された。…

※「《ブラフマ・スートラ》」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android