《下郎》(読み)げろう

世界大百科事典(旧版)内の《下郎》の言及

【時代劇映画】より

…この作品は,あくまで時代劇ならではの手法を駆使して1人の無法者の流転と敗残の姿を描きつつ,現代的ともいえる人間の感情をなまなましく表現して,時代劇を超える時代劇として絶賛され,以後,日本映画史上の最高傑作の一つとみなされている。また,伊藤大輔は,河部五郎主演《下郎》(1927)で封建的な階級制度を批判して〈傾向映画〉の先駆となるとともに,大河内伝次郎主演《新版大岡政談》(1928)で型破りのヒーロー・丹下左膳を生み出した。一方,大スターが次々に独立していったマキノ映画では,山上伊太郎脚本,マキノ正博(雅弘,雅裕)監督のコンビで,南光明主演《蹴合鶏》《崇禅寺馬場》(ともに1928),南光明,根岸東一郎,谷崎十郎主演《浪人街》三部作(1928‐29),河津清三郎主演《首の座》(1929)と,新鮮な感覚に満ちた時代劇の傑作がつくられた。…

【プロレタリア映画】より

… 〈傾向映画〉は,アメリカ映画一辺倒だった日本映画が,初めてヨーロッパ映画,とくにソビエト映画の〈モンタージュ〉の手法の影響を受けてつくられたもの(筈見恒夫《映画五十年史》)であると同時に,築地小劇場による新劇運動,マルクスの《資本論》の翻訳,プロレタリア芸術運動の組織化(1928年には〈全日本無産者芸術連盟(ナップ)〉が結成)など,知識的小市民層の〈左傾〉が社会的現象になってきた時代の産物でもあった。その先鞭をつけたのは,当時29歳の青年監督伊藤大輔が,封建時代の下郎を主人公にして社会的不正,階級制度を痛烈に批判した時代劇《下郎》(1927)である。この映画が,当時〈危険思想〉といわれた社会主義的イデオロギーにつらぬかれているということから,初めて〈イデオロギー映画〉あるいは〈傾向映画〉と呼ばれた。…

※「《下郎》」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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