《原初年代記》(読み)げんしょねんだいき

世界大百科事典(旧版)内の《原初年代記》の言及

【キエフ・ロシア】より

… ギリシアの修道士キリルとメトディオスの兄弟がつくった古スラブ文字(教会スラブ文字)が上層支配層のなかに広まるにつれて《年代記(レトピシ)》と称される編年体の歴史書が修道院を中心に編さんされるようになった。冒頭に述べた《過ぎし年月の物語》は,その代表的なもので,《原初年代記》ともいわれている。内容は,キリスト教説話など宗教色がかなり強いが,スラブ諸族の地誌や慣習の叙述から始まってルーシの国の建国事情,英雄的諸公の物語を経て,当時の現代史であった12世紀初めのスビャトポルク大公にまつわる話で終わっている。…

【スラブ神話】より

…それに対し西スラブ,南スラブについては資料も少なく,わずかに各地方のバリアントによって神格の存在を伝えるのみである。
[神々の起源]
 10世紀の東スラブに異教神のパンテオンが存在していたことを伝える数少ない記述の一つとして《原初年代記》(別名《過ぎし年月の物語》)がある。ここには雷神ペルーンPerunをはじめとして,家畜と富の神ベーレスVeles(ボーロスVolos),太陽神としてダージボグDazh’bogとホルスKhors,火の神スバローグSvarog,風の神ストリボーグStribog,女性労働の守護神モーコシMokosh’,七頭神セマールグルSemarglの名前があげられ,それらの偶像がキエフ大公ウラジーミルによってキエフの丘の上に建てられていたことが記されている。…

【ロシア年代記】より

…11世紀から17世紀まで,主として修道僧によって諸公やツァーリの宮廷あるいは修道院で編まれた。現在まで伝わっている最古のロシア年代記は,12世紀初頭に成立した《過ぎし年月の物語》(《原初年代記》あるいは作者の一人の名をとって《ネストルの年代記》と呼ばれることもある)で,写字生の名からラブレンチー本,所蔵していた修道院の名からイパーチー本とそれぞれ名づけられた2種類の写本がある。これはロシアの《古事記》にあたり,スラブ民族の成立,ロシアの建国からキリスト教への改宗,異民族との戦い,諸公間の内紛など12世紀初めまでのロシア最古の時期の歴史を興味深く物語っている。…

【ロシア文学】より

…それゆえ11世紀から13世紀半ばに至る200年間は〈キエフ時代〉と呼ばれている。この時期の代表的作品は《原初年代記》(《過ぎし年月の物語》)と《イーゴリ軍記》(《イーゴリ遠征物語》)である。前者は11世紀半ばからキエフの修道士たちによって書きつがれ,12世紀の10年代に完成したもので,さまざまな資料や異教時代の伝説を取り入れ,文学的価値の高い部分が多い。…

※「《原初年代記》」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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