世界大百科事典(旧版)内の《善の研究》の言及
【西田幾多郎】より
…そのころから,物心両面の苦悩のうちに参禅の経験を重ねたが,やがて当代の日本に広い影響を与えていたT.H.グリーンの理想主義的人格主義倫理学やW.ジェームズの純粋経験の哲学にも学びつつ,主客未分の〈純粋経験〉の世界を実在の根本実相と観ずる立場に到達した。それを論述したのが《善の研究》(1911)であり,この書は,近代合理主義,理想主義と,現実の日本の非合理的情念,実利主義との間で近代的自我の確立に苦しんでいた当代の青年に,衝撃的な影響を与えた。やがて学習院教授を経て,1910年京都大学哲学科倫理学講座の助教授に着任し,13年教授となって,前任の桑木厳翼の東大転出とともに哲学講座の中心となった。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」