《白魔》(読み)はくま

世界大百科事典(旧版)内の《白魔》の言及

【ウェブスター】より

…当時流行した〈人物類型素描集〉の一つに執筆したものを除いて,単独作として今日に残っているものは,2編の流血悲劇と1編の悲喜劇のみである。悲劇《白魔》(1609‐12)は,何ものによっても阻まれない激しい愛欲と強靱な意志の持主である淫婦ビットリアが,愛人ブラキアーノを教唆してその妻イザベラと自己の夫を殺させ,裁判の場でも悪びれることなく無実の主張を貫き通してブラキアーノとの生活を続けるが,ついにイザベラの兄たちによって復讐される,というセンセーショナルな筋をしくんでおり,虚無的なヒロインの悪の巨大さと,脇人物たちの大半を占めるマキアベリ的悪党たちのからみ合いが,印象的である。いま一つの悲劇《モールフィ公爵夫人》(1614)を支える道徳的立場は《白魔》と同じではないが,逆境においてあくまで自己に忠実に生きようとするヒロインの勇気と傲岸,個人的動機を超えて陰惨な破壊にふける加虐的な悪党たちの性格の複雑さ,劇全体を包む官能と死と不条理の雰囲気において,両者は互いに共通するものを持つといえる。…

※「《白魔》」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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