《観客席》(読み)かんきゃくせき

世界大百科事典(旧版)内の《観客席》の言及

【前衛劇】より

…これらは都会の暗い密室のなかに,突如として侏儒(しゆじゆ),大女,女装者,美少年などの奇優・怪優を出現させる強く〈見世物〉的な性格を帯びた劇であったが,そのような巧みに演出された反・公的な世界,日常世界の規範によって負の価値を帯びたものとしていわれなく排除された肉体・精神が共存する〈全的な世界〉の中で,われわれの無意識下に潜むさまざまな想念が検証されるのであった。寺山の前衛の精神は,日本のこの時代においては最もラディカルなものであり,たとえば上演時間の半分近くが真っ暗闇で,観客はそれぞれの想像力によって見えない部分を組み立て演劇を作りあげるという《盲人書簡》(1973,74)や,75年の4月19日午後3時から翌20日の午後9時にいたる30時間に,都内の二十数ヵ所で同時多発的に行われセンセーションを巻き起こした市街劇《ノック》,また観客席に多数の俳優を配して観客を不意打ちすることにより,観客自身を主人公としてその存在の意味を問う《観客席》(1978)などは,怠惰に習慣化した演劇行為と演劇の場を,その根底から揺さぶる試みであった。寺山は多くの海外の演劇祭に参加して国際的な声価を高めたが,83年5月,47歳の若さで死去した。…

※「《観客席》」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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