おかしい

精選版 日本国語大辞典 「おかしい」の意味・読み・例文・類語

おかし・い をかしい

〘形口〙 をかし 〘形シク〙
[一] 普通と違って、笑うべきさまである。
① 滑稽なさまである。おもしろおかしい。
蜻蛉(974頃)中「『あなかまあなかま』と、〈略〉そこらの人のあぎとふやうにすれば、さすがにいとせんかたなくおかしくみゆ」
軽蔑の笑いをおぼえるさまである。
(イ) 見ぐるしい。聞きぐるしい。つまらない。つたない。〔享和本新撰字鏡(898‐901頃)〕
源氏(1001‐14頃)蜻蛉「我を、いかに、『おかし』と、物笑ひし給ふ心地に」
(ロ) 滑稽で愚かに思える。ばかげている。くだらない。ばかばかしい。「こんな仕事、おかしくてやってられない」
[二] 普通と違って格別な趣があるさま。賞すべきさまである。魅力のあるさまである。
① 感興をおぼえる。興味深い
※竹取(9C末‐10C初)「をかしき事にもあるかな。もっともえしらざりけり。興ある事申したり」
② 物、景色などが美しく、趣がある。風情がある。
大和(947‐957頃)一三七「家をいとおかしうつくりたまふて、時々おはしましけり」
容姿などが、美しく魅力的である。可愛く、愛すべきである。
※宇津保(970‐999頃)国譲上「此の頃は、いとおかしくなりにたり」
④ 音楽、絵、字、歌、ことばのやりとりなどが、上手で趣がある。気がきいている。風流である。
※泉州本伊勢物語(10C前)D「女車のありけるにとかくをかしきことなどいひつきて」
⑤ 人物、態度などが、立派で魅力的である。
落窪(10C後)四「身貧しけれど、よき人は、方異に操に、をかしうぞある」
⑥ 満足である。
※人情本・花筐(1841)二「お前もまた否(いや)でも自己(おいら)に靡いて呉れにゃア可笑(ヲカ)しくねえわナ」
[三] 普通の状態でないものに対して、いぶかしさや奇異を感ずるさま。いぶかしい。怪しげである。変だ。妙だ。
今昔(1120頃か)二五「人々の数(あまた)聞きしに、故もなく然る事を宣ひしかば、可咲(をかし)と思て止侍にき」
[語誌](1)もっぱら散文に用いられる。語義を大別すると、(一)の意の「可笑」と(二)の意の「感賞」とになるため、江戸時代には二語と考える向きもあった。現在でも語源を「烏滸(おこ)」と考えるのは可笑に重点を置く見方で、手もとに招き寄せて愛賞する意の「招(お)く」と考えるのは感賞に置く見方である。
(2)「をかし」の文学といわれる「枕草子」でも、滑稽・軽侮から賞賛・愛賞までの幅をもっていて、「をかし」自体多義的な語といえる。ただ、可笑の「をかし」が通時的にみえるのに対して、感賞の「をかし」は平安散文に顕著な、王朝文化の一端を表わす美意識語で、以後雅語として残っていく。
おかし‐が・る
〘自ラ五(四)〙
おかし‐げ
〘形動〙
おかしげ‐さ
〘名〙
おかし‐さ
〘名〙
おかし‐み
〘名〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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