おじゃる

精選版 日本国語大辞典 「おじゃる」の意味・読み・例文・類語

おじゃ・る おぢゃる

〘自ラ四〙 (「お出(い)である」の変化したものという。近世には「おじゃる」の表記が普通となる)
[一] 「来る」「行く」「居る」「ある」の意の敬語
① 「来る」「行く」「居る」の意の尊敬語。いらっしゃる。おいでになる。
※玉塵抄(1563)一七「閩王のこれえおぢゃったと云たぞ」
② 「ある」の意の丁寧語。あります。
※虎明本狂言・粟田口(室町末‐近世初)「『其子細がござるか』『中々子細がおじゃる』」
浮世草子・沖津白波(1702)二「百姓づれの女ばらみた事もおじゃるまい」
[二] 補助動詞として用いる。「ある」の意の丁寧語。ござります。ございます。
※虎明本狂言・連歌毘沙門(室町末‐近世初)「『たそ』『みどもでおじゃる』」
※歌舞伎・万歳丸(1694)一「ああ頼もしい心底、嬉しうおじゃる」
[語誌](1)本来、(一)①のような尊敬語であったが、時代が下るに従い敬意が低下し、(一)②、(二)のような丁寧語となる。狂言台本等では、「ござる」「おりゃる」「おじゃる」の三者間には敬意の差があり、前者は下人から主人に対して用いているのに対し、後者二つは、対等又はそれ以下に対する親愛気持の表現として用いている。「狂言記」では尊敬語としてよりは丁重語、または丁寧語の補助動詞(テ…、デ…など)の例の方が多い。
(2)室町時代末頃から「おりゃる」の衰退に伴い「おじゃる」が優勢となり、江戸時代初期頃まではかなり勢力を有していたが、江戸時代前期上方語の資料には、特定の階級大名武士僧侶)や年配の町人などに使用が限られており、比較的短命であった。
(3)命令形は「おじゃ」となることがあり、またそれに「や」が付いた「おじゃや」の形もある。「伎・傾城壬生大念仏‐上」の「今一度蔵へ入尋ておじゃ」、「浄・夕霧阿波鳴渡‐中」の「あの子をせめて相駕籠(あひかご)でいざおじゃやとだきよするを」など。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「おじゃる」の意味・読み・例文・類語

おじゃ・る〔おぢやる〕

[動ラ四]《「おいである」の音変化》
来る」「行く」「居る」の尊敬語。おいでになる。いらっしゃる。
「身どもがよい所へやって進ぜう。こちへ―・れ」〈虎清狂・猿座頭
「木曽殿ハ…信濃国ニ―・ッテゴザル」〈天草本平家・三〉
ある」「居る」の丁寧語。ございます。あります。おります。
「イソポト言ウテ、異形不思議ナ人体ガ―・ッタガ」〈天草本伊曽保・イソポが生涯
(補助動詞)丁寧の意を表す。…でございます。…であります。
「その水はどこにで来て―・るぞ」〈虎清狂・薬水

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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