日本大百科全書(ニッポニカ) 「おろし(颪)」の意味・わかりやすい解説
おろし(颪)
おろし / 颪
山から吹き降りてくる風。主として本州の太平洋沿岸一帯でいい、日本海側ではこれを「だしかぜ」とよぶ。おろしは、それが吹き出してくる風上の山の名などをとって「筑波(つくば)おろし」「秩父(ちちぶ)おろし」「比叡(ひえい)おろし」「浅間(あさま)おろし」「富士(ふじ)おろし」など、固有名をもつものが少なくない。おろしには山から吹き降りるとき、乾燥して気温の上昇するフェーン型の場合と、寒冷な気流がほとんど気温が上昇せずに低温のままで吹き降りてくるボラ型の場合があるが、フェーン型の場合は一般にフェーンとして別に注目されるので、普通「おろし」というときにはボラ型の寒風をいう場合が多い。外国ではクロアチアのダルマチア地方に吹く「おろし」がもっとも有名で、この地方ではこの風をボラBoraとよんでいる。
[根本順吉]