がんの検査(臨床検査の基礎知識)

六訂版 家庭医学大全科 の解説

臨床検査の基礎知識
がんの検査
(健康生活の基礎知識)

 がんにはたくさんの種類があり、検査方法もさまざまあります。ここでは、発生率の高い主ながんの検査についてみていきます。なお、検査項目は主なものを取り上げてあります。手順は、症状やがんの状態などによっては順序が変わることがあります。

●肺がん

【検査項目・手順】

①胸部単純X線/喀痰(かくたん)細胞診腫瘍マーカー

②胸部CT/PET­CT/気管支内視鏡/生検/擦過(さっか)細胞診

 まず最初に行う検査が、①の胸部単純X線撮影と喀痰細胞診です。どちらも有効ではありますが、限界もあります。

 X線撮影は、末梢型がん(肺の奥のほうにできるがん)を発見するのに有効ですが、早期の肺門型がん(肺の中心部にできるがん)はX線に写らないため、発見することはできません。さらに末梢型がんでも、1㎝以下のがんではまず発見することは不可能です。

 一方、喀痰細胞診で発見できるのは圧倒的に肺門型がんで、末梢型がんではかなり進行しても血痰は出てこないため、発見することはできません。この検査は、一般的に数回繰り返して行います。

 腫瘍マーカーは、シフラSCCNSE、Pro\ GRP、SLXが用いられています。

 ①の検査でがんが疑われたら、胸部CTのなど②の検査でさらに詳しく調べていきます。

●胃がん

【検査項目・手順】

①上部消化管X線造影/腫瘍マーカー

②上部消化管内視鏡/生検(病理診断)

 まず、最初に行われるのが①の上部消化管X線造影、いわゆるバリウム検査で、集団検診でもこの方法がとられています。このX線造影だけでも、かなりの症例で診断が可能ですが、通常は②の上部消化管内視鏡(胃カメラ)も併用して判断していきます。

 最近は内視鏡が進歩し、ファイバースコープ自体が細くなって、それほど苦痛になることがなくなってきたため、最初から内視鏡でチェックする場合も多くなっています。

 腫瘍マーカーとしては、CEA、CA19­9などが用いられています。

 内視鏡が胃がん診断の最終検査ですが、近年、内視鏡と超音波組み合わせた超音波内視鏡の検査が行われ始めました。これによって、がんの進行度や大きさ、リンパ節やほかの臓器への転移や浸潤(しんじゅん)があるかどうかなどが、より細かく診断できます。

●肝臓がん

【検査項目・手順】

①血液検査(肝機能検査)/腫瘍マーカー

②腹部超音波

③CT/MR/腹部(肝臓)血管造影/PET­CT

 何らかの症状があった場合には、まずスクリーニングふるい分け)のために、①の肝機能検査(ASTALTALPγ(ガンマ)­GTなど)やB・C型肝炎ウイルスの検査(HB関連抗原・抗体HCV抗体)などを行います。

 腫瘍マーカーは、AFPが80%程度、PIVKA­Ⅱが50%程度で陽性になります。

 次に、②の腹部超音波、③のCT、MRなどによって画像診断を行い、腫瘍の有無、良性か悪性か、大きさ、個数などを総合的に検討していきます。そして、必要に応じて腹部血管造影を行い、腫瘍に栄養を与えている肝血管を確定します。

 腹部超音波は微小肝細胞がんの検出に有効で、1㎝程度でも発見が可能です。また、腹部血管造影(選択的腹腔動脈造影)は肝細胞がんと転移性肝がんの鑑別に有効です。

●大腸がん

【検査項目・手順】

①便潜血反応(数回)/直腸指診/腫瘍マーカー

②下部消化管X線造影

③下部消化管内視鏡/生検(病理診断)

 検診では、①の便潜血反応が行われていて、第一次のスクリーニング(ふるい分け)として効果を発揮しています。ただし、この検査は何回か繰り返して行わないと確かなことはわかりません。

 直腸がんでは、肛門から10㎝程度までの部分にできたがんは、触診(しょくしん)(直腸指診(ししん))で確認できます。また、直腸鏡検査は外来で行うことが可能です。

 便潜血反応で疑わしい所見があったときは、②の下部消化管X線造影が行われ、隆起があったりポリープ状のものがよくわかります。

 ③の下部消化管内視鏡が最終検査ですが、近年は最初から内視鏡を行うことも多くなっています。

 内視鏡は、X線造影では発見できない色調の変化や小さな病変を見つけることができます。疑わしい病変があれば、同時にその組織を少し採取して生検を行います。悪性と判断がついたポリープ状の腫瘍は、内視鏡観察下で切除することも可能です(ポリペクトミー)。また、胃がんと同様、大腸がんでも超音波内視鏡の検査が行われてきています。

●乳がん

【検査項目・手順】

①触診

②マンモグラフィ/超音波検査/MR/PET­CT

穿刺(せんし)吸引細胞診(病理診断)

④試験切除による生検(病理診断)

 乳がんは、自己チェック法がかなり広く知られているため、好発年齢(40~60歳)になった人は、自分で定期的に調べてみることが早期発見のために最も大切です。

 専門医による検査でも、まずは触診から始まります。多くの人がしこりを訴えて受診していますが、実際にがんである率は低いので、あまり怖がらずに受診してみることが大切です。

 しこりから乳がんが疑われる場合には、②のマンモグラフィ(乳房単純X線撮影)や超音波でさらにくわしく調べることになります。

 ただし、若年の人では乳腺実質が豊富にあるため、マンモグラフィではうまく検出できません。そのため超音波が行われます。一方、50歳以上の人ではマンモグラフィのほうがはっきりと検出することができます。そのほか、MR、PET­CTを行うこともあります。以上の検査の組み合わせで、乳がんの約80%は診断できます。

 それでも確定できない場合は、③の穿刺(せんし)吸引細胞診(細い針を刺して細胞を採取し、病理検査する)を行います。とくに小さい腫瘤では、細胞診は有効です。それでもまだ確定できない場合には、④の試験切除(腫瘤部分を小さく切り取る)による生検を行います。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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