日本大百科全書(ニッポニカ) 「さび(錆)」の意味・わかりやすい解説
さび(錆)
さび
金属表面に沈着した腐食生成物をいう。普通「錆」と書くが、とくに鉄の腐食生成物をいう場合は「銹」と書くことがある。英語のrustは鉄の銹のみを意味している。通常は水分を伴うものをいい、高温酸化の生成物はスケールscaleといって区別する。
[山崎 昶]
さびの成分
鉄の銹(赤銹)は水和酸化物が主体である。さらに、大気中の二酸化炭素や二酸化硫黄(いおう)、食塩分などによって生じた塩基性塩も含まれる。銅の錆は塩基性炭酸銅(青錆または緑青(ろくしょう))が主体である。鉄の銹は通常は2層をなし、比較的強く密着した内層と、緩い結合の外層からできている。しかし成分は大差なく、マグネタイト(四酸化三鉄)、ゲータイトα-FeOOH、およびレピドクロサイトγ-FeOOHが大部分である。亜硫酸ガス汚染地域ではマグネタイトが減じ、かわりに硫酸鉄(Ⅱ)四水和物がみられることが多い。
[山崎 昶]
さび止めの方法
一般にはさび層はマクロ的な割れ目が多いこともあって、腐食に対する抵抗力はあまり大きくない。人工的に酸化被膜をつくり(金属が直接空気や湿気に触れないように)、それ以上のさびの進行を食い止める方法もアルミニウムなどでは成功している(商品名アルマイト)。いわゆる耐候性鋼はマンガンやクロムなどをごくわずか添加した低合金鋼であるが、大気中における腐食の速度は通常の鉄に比べてはるかに小さい。この原因はまだよく解明されていないが、添加した微量元素のために表面のさびの非結晶化がおこり、被膜の割れ目が減じ保護作用が強化されたものとされている。クロムやニッケルなどを合金としたステンレス鋼は、酸化性の環境下でも不動態化を容易にした一連の合金鋼をさす。用途によりいろいろな成分のものがつくられている。
[山崎 昶]
『井上勝也著『さびの科学』(1979・三省堂)』