しんかい2000(読み)しんかいにせん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「しんかい2000」の意味・わかりやすい解説

しんかい2000
しんかいにせん

海洋科学技術センター(現、海洋研究開発機構)の深海潜水調査船。支援母船「なつしま」(1553トン)とともに行動する母船随伴型で、最大潜航深度2000メートルに達する日本初の本格的潜水調査船である。主要目は、全長9.30メートル、幅3.02メートル、高さ2.92メートル、重量(空中)23.2トンで、乗員は操縦者2名・観測者1名の計3名、水中巡航速力約1ノット、最大速力約3ノット。マニピュレーターSTD塩分水温・深度)測定器、流向流速計、ソナーなど多くの測定用機器を搭載し、標準潜航時間は約8時間。1981年(昭和56)1月三菱(みつびし)重工業神戸造船所で進水し、同年10月の総合海上試運転では三重県熊野灘(なだ)で2008メートルの潜航に成功、「なつしま」(同年10月完工)とともに「しんかい2000システム」が完成した。その後紀州沖、富山湾などの海底精査を行った。

 深海底への下降海面への浮上には重力浮力(比重約0.55の浮力材を使用。100マイクロメートル程度の中空ガラス球をエポキシ樹脂で固めたもの)の差を利用する。ショットバラスト装置に約600キログラムのショット(直径約2.4ミリメートルの鋼球)を搭載し、下降はこの重量により行い、所定の観測深度に達したのち、ショットの一部分を捨てて浮力と重力をつり合わせる。海面への浮上は残りのショットを捨てることにより行う。海中での移動は、銀‐亜鉛蓄電池を電源とする推進器によっている。コントロール室部分は調質(ちょうしつ)高張力鋼NS90を使用し、2000メートルの水圧に耐えうる。海底鉱物資源の調査(分布・生産機構)、深海生物の調査(分布・賦存(ふそん)量)、海底構造物の調査(状況)、海洋物理関係の調査(海流潮流など深海域海洋環境)、海洋地球物理学関係の調査(地殻の構造・変動)への活用が行われた。2002年(平成14)11月、相模(さがみ)湾での潜航を最後に運航を休止。現在は「しんかい2000」にかわり、最大潜航深度6500メートルの「しんかい6500」が有人潜水調査船として調査観測作業を行っている。

[半澤正男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「しんかい2000」の意味・わかりやすい解説

しんかい2000
しんかいにせん

海洋科学技術センター(→海洋研究開発機構)が開発した有人潜水調査船。三菱重工業神戸造船所で建造され,1981年10月完工。長さ 9.3m,幅 3.0m,高さ 2.9m,空中重量約 24t,最大潜航深度 2000m。内径 2.2mの耐圧殻にのぞき窓 3個をもち,3人 (操縦者 2人,研究者 1人) が搭乗する。潜航時間は通常 7時間 (非常時 80時間) ,最大航走速力 3knで,蓄電池を動力源とする電気推進である。常時装備機器は,カラーTVカメラ,ステレオスチルカメラ,マニピュレータ 1基,流向流速計,水深水温塩分計である。測位のための音響トランスポンダを装備し,母船で測位して水中通信により誘導される。2002年11月,通算 1411回の潜航を終え活動を休止した。

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世界大百科事典(旧版)内のしんかい2000の言及

【海洋開発】より

…また将来の国際的な海洋法による新秩序を考慮しつつ,海洋開発審議会は〈長期的展望にたつ海洋開発の基本的構想について〉(79年8月)および〈その推進方策について〉(80年1月)の二つの答申を行った。81年には深海潜水調査船〈しんかい2000〉およびその母船〈なつしま〉が完成したほか,大型プロジェクトとしては海底石油生産システムおよび深海底マンガン団塊採鉱システムの開発が進行中である。82年には国内法として深海底鉱物暫定措置法が制定され,国連の海洋法条約に82年2月署名した。…

【深海潜水艇】より

…とくに,アメリカのアルビンAlvin(1964建造,73改造)は,最大使用深度は4000mとバチスカーフ型に劣るものの,800回に及ぶ潜航実績を有し,深海潜水調査船として有名である。日本でも,81年に使用深度2000m級のしんかい2000が建造され,2008mの潜航深度を記録している(その後89年に建造された〈しんかい6500〉が同年6527mの潜航深度を記録)。
[潜水艇のシステム]
 潜水艇の艇体構成上の主要なシステムとしては,耐圧殻や外殻および浮力材などの艇体構造と,動力・推進操縦装置および重量・トリム調整装置などがある(図)。…

※「しんかい2000」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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