たく・る
〘他ラ四〙
① 自分のものとして引き寄せる。ひっぱり取る。奪って自分のものにする。
※天理本狂言・
柑子(室町末‐近世初)「ひっつかまへて、かわをきつうたくって、わたくしが、たべて御ざると云」
② 自分のほしいままに扱う。
※
咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)上「座主、姉妹の娘を、別々に置き、思ふほどたくりて、飽き候時」
④ だます。ごまかす。手をぬく。
※雑俳・名付親(1814)「真白に子の筆たくる市が嚊」
⑤ 動詞の
連用形に付いて
補助動詞のように用い、荒々しく事を行なう、限度をこえて強引にするの意を表わす。「塗りたくる」など。
[補注]この語と「たぐる(
手繰)」とは、「
日葡辞書」に「Tacuri, u, utta
(タクル)〈訳〉引っ張って、またはまるめて取る。または力ずくで手から取る」と「Taguri, u, utta
(タグル)〈訳〉縄などをまるめながら取る。ナワヲ taguru
(タグル)」とが別項目になっていたり、近世多く用例のみられる「たくりかかる」「たくりかける」が清音であったりすることなどから、別語として扱ったが、同語源かどうかは明らかでない。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「たくる」の意味・読み・例文・類語
たく・る
[動ラ五(四)]《手繰る意から》
1 衣服の袖や裾などをまくり上げる。たくしあげる。たくりあげる。「シャツの袖を―・る」
2 無理に奪い取る。引っ張って取る。ひったくる。
「御堪忍とすがり付き、箒を―・れば」〈浄・堀川波鼓〉
3 無理に頼む。せがむ。
「こりゃさ、拝み申す、くれ申せと、―・りかかれば」〈浄・宵庚申〉
4 動詞の連用形に付いて、荒々しく事を行う、盛んに行う、などの意を表す。「塗り―・る」
[動ラ下二]「たくれる」の文語形。
[類語]まくる・めくる・まくり上げる・まくれる・たくれる・たくし上げる・たぐり上げる
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