として

精選版 日本国語大辞典 「として」の意味・読み・例文・類語

と‐して

連語〙 (格助詞「と」または断定助動詞「たり」の連用形「と」に、サ変動詞「す」の連用形「し」と接続助詞「て」の付いたもの)
① (動詞「す」が原義を比較的強くとどめている場合) …と思って。…しそうになって。
※続日本紀‐天平一五年(743)五月五日・宣命「長く遠く仕へ奉れ等之弖(トシテ)冠位上げ賜ひ」
② (体言に付いて) 全体で一つの格助詞のように用いる。
(イ) …の資格で。…の立場で。
※続日本紀‐天平宝字八年(764)九月二〇日・宣命「夫れ人止之天(トシテ)己が先祖(とほつおや)の名を興し、継ぎひろめむと念はずあるはあらず」
源氏(1001‐14頃)乙女「たかき家の子として、官(つかさ)かうぶり心にかなひ」
(ロ) 「も」を強めた表現。多く、下に打消を伴って「例外なく全部」の意となる。
※法華義疏長保四年点(1002)二「波若に由るが故に、行として成ぜ不といふこと无く、累として、尽き不といふこと无し」
(ハ) …でもって。…で。
※虎明本狂言・口真似(室町末‐近世初)「是某一人としてたぶるもいかがでござる程に」
③ 全体で接続助詞のように用いられ、連用中止機能を表わす。
※源氏(1001‐14頃)夕顔「ほそやかにたをたをとして物うちいひたるけはひ」
④ (接続詞的用法) 近世、女性手紙で、前文から本文に移るときの語。それはそれとして。さて。
※浄瑠璃・道中亀山噺(1778)四「一通りは知れた事、として我事も愈請出極り候故」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「として」の意味・読み・例文・類語

と‐し‐て

[連語]《格助詞または断定の助動詞「たり」の連用形「と」に、サ変動詞「す」の連用形「し」、接続助詞「て」の付いたもの》
…の資格で。…の立場で。「公人として発言する」「親として当然のことをしたまでだ」
それまでの話の内容をひとまず保留して、別の話題に移る意を表す。「仕事はいいとして、からだのぐあいはどうだい」
(下に打消しの語を伴って)例外なく全部である意を表す。「一人として生き残った者はいない」「一時いっときとして目が離せない」
…で。
「それがし一人―たぶるもいかがでござるほどに」〈虎明狂・口真似
[補説]1を格助詞、2を接続助詞、3副助詞などとする説もある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android