むくつけし

精選版 日本国語大辞典 「むくつけし」の意味・読み・例文・類語

むくつけ・し

〘形ク〙
① 妖怪変化など、正体のわからない恐ろしげなものに対する、不気味さ、不快感などを表わす。正体がわからず不気味である。うす気味悪い。
大和(947‐957頃)一四七「御とくに年頃ねたきものうち殺し侍りぬ。今よりは永き御まもりとなり侍るべきとて、この事の初めより語る。いとむくつけしと思へど」
源氏(1001‐14頃)若菜下「昔見給ひしもののけのさまと見えたり。あさましくむくつけしとおぼししみにしことの変らぬもゆゆしければ」
本心などがはかりがたく、うす気味悪い。
落窪(10C後)二「典薬助〈略〉いと心づきなげにゑみて、阿漕は今は翁を思ひ給はんずらむなといへば、阿漕いとむくつけく思ひて」
※源氏(1001‐14頃)若紫「若宮はいとむくつけく、いかにする事ならむとふるはれ給へど」
③ 行動などが常軌を逸していて恐るべきである。常識をこえていて、気味が悪い。
※伊勢物語(10C前)九六「かのをとこは、天の逆手(さかて)をうちてなむのろひ居るなる。むくつけきこと」
※源氏(1001‐14頃)竹河「ゆるし給はずは、盗みも取りつべく、むくつけきまで思へり」
④ うとましくなるほど無骨である。無風流で品がない。
※源氏(1001‐14頃)玉鬘「むくつけき心の中に、いささか、好きたる心まじりて」
解体日暮れ(1966)〈杉浦明平〉六「無愛相で、むくつけき露骨さで」
むくつけ‐げ
〘形動〙
むくつけ‐さ
〘名〙

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「むくつけし」の意味・読み・例文・類語

むくつけ・し

[形ク]
無骨ぶこつである。無作法である。無風流である。現代語としては、「むくつけき大男」のように連体形だけが用いられる。
「やれやれ―・きやせ法師の」〈仮・竹斎・上〉
気味悪い。不気味である。
「物ののさまと見えたり。あさましく―・し」〈・若菜下〉
常軌を逸していて恐ろしい。
「(強イ風ガ)物も見えず吹き迷はして、いと―・ければ」〈野分
[類語]野暮野暮ったい無粋無骨無風流無作法無造作泥臭いプリミティブ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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