らっぱ

改訂新版 世界大百科事典 「らっぱ」の意味・わかりやすい解説

らっぱ

古代の中国で,軍事信号などに用いられた金属製管楽器の名。喇叭,喇吧,喇,囉叭などの字も当てられる。漢字の〈喇〉は早口(はやくち),〈叭〉は大口をあける意味だとされているが,ほかにもさまざまな字を当てた例がある。その名はサンスクリットからきた語だともいわれるが,確証はない。管末の開口部の広がりが,アサガオの花のような形をしている小銅角と,チューリップ形をした大銅角という両タイプがあり,喇叭という語を狭義に使った場合は前者のほうを指した。また類義語に号筒(ごうとう)があり,広義には両者を狭義には後者のほうを意味した。近代においては,アサガオ形開口をもつ中国型のスルナイすなわちソーナー(嗩吶)のことも,喇叭というようになっている。今日,日本ではまず第1に,金管楽器俗称ないし愛称となっており,トランペットホルンビューグル等々,洋楽系リップ・リード楽器(くちびるの振動を利用して鳴らす楽器)の類がこの名で呼ばれている。またときには,これらと似た外形をしているもの,似た音などの意味にも用いられる。ちなみに,豆腐行商に用いられる〈らっぱ〉は,くちびるで鳴らすわけではなく,内部に金属製リードが取り付けてある。なお古代中国だけでなく,洋楽系の〈らっぱ〉の類の多くもまた,軍事,警備狩猟,牧畜等々の信号にしばしば用いられてきた歴史をもつ。しかし近代になってから各国軍隊などに(軍楽隊用とはまた別に),信号ラッパとして採用されたのは,主としてビューグル系統の楽器である。日本の旧軍隊や現在の自衛隊例外ではない。
角笛
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「らっぱ」の意味・わかりやすい解説

らっぱ
らっぱ / 喇叭

金属製の管楽器を漠然と総称する俗語。語源としては、古代中国で軍用信号器として使われていた喇叭、サンスクリット語のrava(叫ぶ)などが考えられるが、定説はない。やや厳密な用語としては、リップリード(口唇を発音源とする)のトランペット、ホルン、ビューグルなどに限定することもあるが、外形(円筒管、朝顔)、音量(大)、音色(華やか)などが類似した「豆腐屋のらっぱ」「チャルメラ」(いずれもダブルリード)などの楽器や、「蓄音機のらっぱ」「(キセルの別名としての)らっぱ」「らっぱズボン」など楽器以外にも転用されるし、「らっぱを吹く(ほらを吹く、大言壮語する)」のように慣用句にも応用されている。日本に楽器らっぱが伝えられたのは、幕末にイギリス、フランスの兵法の一部としてであった。

[山口 修]

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世界大百科事典(旧版)内のらっぱの言及

【楽器】より

…さらに金属を用いるようになると,鐘やチター系弦楽器が現れる。さらにハープ系弦楽器は前3000年代に,両面太鼓は前2000年代に,シンバルやリュート系弦楽器,金属製のらっぱなどは前1000年以後に現れたといわれる。紀元後に初めて現れたものには,笙,銅鑼(ゴング),弓奏弦楽器などがあるとされる。…

【金管楽器】より

…唇の振動で音をつくる管楽器の総称。俗にいうらっぱの類。西洋の主流的な楽器でこれに属するものが,各種とも金属製であることから来た呼び方。…

※「らっぱ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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