アオギリ(読み)あおぎり

改訂新版 世界大百科事典 「アオギリ」の意味・わかりやすい解説

アオギリ (青(梧)桐)
Chinese parasol-tree
phoenix tree
Firmiana simplex (L.) W.F.Wight

アオギリ科の落葉中高木で,高さ10~15m,直径30~60cmになる。樹皮は緑色でなめらかだが,老木では灰白色の横縞が多くできる。幹はまっすぐに伸び,枝が1ヵ所から輪状に出るので,生長すると階段状をなす。小枝は太い。葉は互生で大型,枝先に集まってつく。長さ10~30cmの長い葉柄をもち,葉身は直径15~30cm,基部は心形で,掌状に3~5中裂する。雌雄同株。6~7月ごろ枝端に生じた大型の円錐花序に黄緑色をした小さい雄花雌花が混生して咲く。果実は袋果。成熟前に早くから5裂開し,各片は長さ7~10cmの舟形で,ふちに直径約6mmの球形種子を数個ずつつける。アオギリは葉裏が有毛のものと無毛のものがあり,前者を狭義のアオギリvar.tomentosa(Thunb.)Kurata,後者をケナシアオギリvar.simplexという。日本に本来自生すると考えられているのはケナシアオギリで,伊豆半島,紀伊半島,四国,九州,沖縄の沿海地に生育し,さらに台湾,中国,インドシナに広く分布する。狭義のアオギリは中国原産で,生長が早く丈夫なため公園,街路樹としてよく植えられ,また野生化していることもある。木材は淡色,比較的軽軟で,狂いやすくまた耐久性が低いため特別の用途はない。樹皮は強靱で縄とし,またその粘性物質を和紙糊料とする。種子はタンパク質や脂肪に富み,炒って食べられる。アオギリ属はおもにアジア南部に約10種,アフリカに1種がある。

双子葉植物。約70属1000種からなり,分布は熱帯が中心である。多くは樹木だが,一部に草本やつる性のものを含む。葉は互生,まれに対生,単一または掌状複葉で,托葉をもつ。花は両性,まれに単性,5数性。果実は乾果または液果。シナノキ科,アオイ科やキワタ科と近縁。種子にアルカロイドを含むものがあり,興奮作用を有する。熱帯アメリカ原産のカカオは,広く熱帯で栽培され,テオブロミンを含む種子からはチョコレートやココアの原料が得られる。また西アフリカ原産のコーラなど,コラノキ属の樹木の種子はカフェインを含み,コーラ飲料の原料として用いられる。木材樹種としては西アフリカのマンソニアMansonia altissima (A.Chev.) A.Chev.およびオベチェTriplochiton scleroxylon K.Schum.がよく知られる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アオギリ」の意味・わかりやすい解説

アオギリ
あおぎり / 青桐
梧桐
[学] Firmiana simplex (L.) W.F.Wight
Firmiana platanifolia Schott. et Endl.

アオギリ科(APG分類:アオイ科)の落葉高木。高さ10~15メートルになり、小枝は太く、樹皮は滑らかで緑色である。葉がキリに似ていて、樹皮が鮮緑色なので青桐の名がある。葉は大きく、長い柄があって互生し、扁円(へんえん)形で長さ15~30センチメートル、掌状に浅く3~5裂し、上部の3裂片は大きく、縁(へり)に鋸歯(きょし)がない。葉の裏に軟細毛を密生する。6~7月ころ枝先に長さ30~50センチメートルの大きな円錐(えんすい)花序を出し、淡黄褐色の雄花と雌花が多数混生して開く。花弁がなく、萼(がく)は5深裂していて、裂片は線状披針(ひしん)形で反り返る。外面には淡黄褐色の星状毛が密生し、内面の基部が紅色になる。雄花には中央に花糸が筒状に合生した雄しべがあり、雌花には花糸と合生した柄の先に雌しべが1本あり、子房の基部に退化した葯(やく)がある。果実は放射状に開出した5個の分果になり、袋果(たいか)状で成熟前の9月には開裂して舟形となり、縁に球形でしわのある種子を数個つけ、10月に熟す。沖縄、台湾、中国大陸、インドシナに分布する。伊豆半島以南の海岸地方には、葉の裏にほとんど毛がないケナシアオギリとよぶものが野生化しているが、これを自生とみる説もある。陽樹で適湿地を好むが、乾燥地にも強く、潮水、潮風、大気汚染にも耐え、強い剪定(せんてい)にも耐える。街路樹、公園、学校の庭などに広く植えられている。繁殖は実生(みしょう)による。材は柔らかく建具や家具、パルプなどに用いられ、樹皮の繊維は水に強く、縄や布むしろなどに利用される。種子は炒(い)って食べられ、室町時代には菓子にしていた。

[小林義雄 2020年4月17日]

 なお、漢名の梧桐は、『万葉集』で大伴旅人(おおとものたびと)が「梧桐(ごとう)の日本琴(やまとこと)一面 対馬(つしま)の結石山(ゆひしやま)の孫枝(ひこえ)なり」と記したのが日本で最初の記録であるが、これには桐説もある。また「桐一葉落ちて天下の秋を知る」は、元来中国の梧桐をさす。

 中国では古くから食用、薬用にされ、6世紀の『斉民要術(せいみんようじゅつ)』には栽培法が述べられているほか、炒った種子は実に美味でヒシに似た味と記されている。

[湯浅浩史 2020年4月17日]

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