アズマガヤ(読み)あずまがや

改訂新版 世界大百科事典 「アズマガヤ」の意味・わかりやすい解説

アズマガヤ (吾妻茅)
Asperella longe-aristata (Hack.) Ohwi

山林の中に見るイネ科多年草で,全体の形はややカモジグサに近い。和名産地の一つ,福島県吾妻山にちなむ。茎は短い根茎から単生または2~3本まばらに叢生(そうせい)し,高さは60~80cm,数節がある。葉は幅の狭い披針形で,長さは10~20cm,幅は2cmほどで,中央以下でねじれて葉の裏が表に出るいわゆる裏葉となる。葉の表は淡い緑色,裏は濃緑色である。夏に茎の頂に長さ10~15cmの細い穂状花序1本を出し,上部は垂れて毛のある中軸上に断続して小穂をつけ,カモジグサのようになる。小穂は1節に1~2個あり,長さは10mmくらいの披針形で,1個または2個の小花があり,長さ1~2cmの芒(のぎ)がある。苞穎(ほうえい)はオオムギに見られるように退化して刺針状になり,小花脱落後も花穂の軸上に残着する。日本と朝鮮半島南部の特産種で,北海道から九州まで分布するが,比較的まれである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アズマガヤ」の意味・わかりやすい解説

アズマガヤ
あずまがや / 吾妻茅
[学] Hystrix duthiei (Stapf) Bor
Asperella longearistata (Hack.) Ohwi

イネ科(APG分類:イネ科)の軟弱な多年草。根茎は短く、稈(かん)は繊細で斜上し、葉はやや広く、線状披針(ひしん)形。6~7月に花を開き、花序は頂生して弓状に曲がり、中軸および花穂の基部は軟毛に覆われる。小穂は双生し1または2小花をもち、長さ4~6ミリメートル。包穎(ほうえい)は細く、退化するものもある。北海道から九州にかけての山地の林内にややまれにみられ、朝鮮、中国にも分布する。福島県吾妻山で知られたため、この和名がついた。

[許 建 昌 2019年8月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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