アセトニトリル(読み)あせとにとりる(英語表記)acetonitrile

デジタル大辞泉 「アセトニトリル」の意味・読み・例文・類語

アセトニトリル(acetonitrile)

酢酸さくさんニトリルに相当する化合物無色液体で、有毒。有機合成溶剤に使用される。シアン化メチル

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アセトニトリル」の意味・わかりやすい解説

アセトニトリル
あせとにとりる
acetonitrile

酢酸CH3COOHのニトリルに相当する化合物。正式にはエタンニトリルというが、一般的にはアセトニトリルといわれている。シアン化メチル、シアン化メタンともいう。

 エーテルに似たにおいのする無色の液体。工業的にはプロピレンアンモ酸化法によるアクリロニトリルCH2=CHCN合成の際の副生成物として製造されている。

  3CH2=CHCN+2NH3+2O2
   ―→3CH3CN+2HCN+CO2+2H2O
 多くの有機溶媒、水に溶ける。加水分解するとアセトアミド、酢酸となる。ビタミンB1サルファ剤香料などの原料となる。ブチレンブタジエンの抽出剤、タール分除去溶剤、紡糸溶剤などとしての用途もある。非プロトン性極性溶媒として有機合成反応にも用いられる。毒性があるので、取扱いには注意を要する。

[谷利陸平]

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化学辞典 第2版 「アセトニトリル」の解説

アセトニトリル
アセトニトリル
acetonitrile

C2H3N(41.05).CH3CN.シアン化メチル(methyl cyanide)ともいう.アセチレンアンモニアの反応でも合成できるが,現在の工業製品は,主としてプロペンのアンモ酸化によるアクリロニトリルの合成において副生するものが利用されている.エーテル様臭気を有する無色の液体.融点-44.9 ℃,沸点81.6 ℃.0.7828.1.3442.水,メタノール,エタノールなどに可溶.アクリル系合成繊維の紡糸溶剤,ブタジエンイソプレンなどの選択的溶剤に用いられる.また,アセトフェノンエチルアミン,ビタミン B1 などの合成原料にも使用される.[CAS 75-05-8]

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改訂新版 世界大百科事典 「アセトニトリル」の意味・わかりやすい解説

アセトニトリル
acetonitrile

最も簡単な有機シアン化物。化学式CH3CN,沸点81.77℃の無色の液体で,シアン化メチルmethyl cyanideともいう。毒性が非常に高いので,蒸気吸入も避ける注意が必要である。アセトアミドを五酸化リンで脱水することにより得られる。工業的には,プロピレンとアンモニアからアクリロニトリルを合成する際の副生成物として得られ,単独には生産されていない。極性の強いシアノ基が分子全体の性質に大きく寄与するため,アセトニトリルの誘電率は20℃で37.5という大きな値をもつ。したがって水とはどんな割合にも混ざり合う。エチルアルコールやエーテルにも溶けるが,石油エーテルには溶けない。イオン化を含む反応を促進する溶媒,あるいは無機塩に対する非水溶媒として,実験室でも,また工業的にも広く用いられる。ビタミンB1,サルファ剤,香料などの工業原料でもある。
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