日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
アダムズ(Jane Addams)
あだむず
Jane Addams
(1860―1935)
アメリカの社会改革者、人道主義者、平和主義運動家。1860年9月6日イリノイ州に生まれる。州議員を長く務め、第16代大統領のリンカーンを敬愛していた父親から強い影響を受けた。ロックフォード大学卒業後、フィラデルフィアの女子医大に学んだが、病のため勉学を断念。失意のまま西欧を旅行中(1887~1888)、ロンドンのスラム街にある施設トインビー・ホールを見学して感銘を受け、帰国後友人エレン・スターとともに1889年9月、シカゴのスラム街にアメリカ初のセツルメント、ハル・ハウスHull Houseを設立、人々とくに貧しい移民の生活改善に努力し、教育、文化活動を推進した。以後、女性参政権運動や腐敗したシカゴの市政改革運動などさまざまな社会改革運動に取り組み、第一次世界大戦を機に強力な反戦平和運動を展開、中心的指導者として国際的にも活躍した。その活動により1931年ノーベル平和賞を受賞。自伝をはじめ多くの著書も残した。1935年5月21日シカゴで死去、生地シーダービルに葬られた。
[太田和子]
『J・アダムズ著、市川房枝記念会・縫田ゼミナール訳『ハル・ハウスの20年』(1996・市川房枝記念会出版部)』▽『コンウェイ著、吉村俊男訳『ジェーン・アダムズ――アメリカの一女傑』(『日米フォーラム』第11巻9号所収・1965・好学社)』▽『木原活信著『ジェーン・アダムズ』(1998・大空社)』▽『木原活信著『J. アダムズの社会福祉実践思想の研究――ソーシャルワークの源流』(1998・川島書店)』