アディポサイトカインの病態生理的意義

内科学 第10版 の解説

アディポサイトカインの病態生理的意義(脂肪由来ホルモンと疾患)

(3)アディポサイトカインの病態生理的意義
 肥満者では,体脂肪量に比例して血中レプチン濃度が上昇し,体脂肪量のすぐれた生化学的指標として注目されている.一方,肥満者では,血中レプチン濃度の上昇にもかかわらず肥満が持続するため,レプチンの作用障害(レプチン抵抗性)を有するものと推定されている.実際,肥満に対するレプチン治療の反応性は必ずしも期待どおりのものではなく,抗肥満薬としての臨床応用にはレプチン抵抗性の分子機構の解明が必須である. アディポネクチン(adiponectin)は,インスリン感受性作用,抗炎症作用を有するアディポサイトカインであり,内臓脂肪量の増加に伴って血中濃度が減少する.最近,アディポネクチン受容体が報告され,細胞内シグナル伝達経路が明らかになるとともに,肥満に伴うアディポネクチン作用不全が提唱されている.臨床的にも,アディポネクチンの血中濃度や遺伝子多型が心血管イベントや糖尿病の発症に相関することが報告されている.[小川佳宏・菅波孝祥]
■文献
Friedman JM, Halaas JL: Leptin and the regulation of body weight in mammals. Nature, 395: 763-770, 1998.
Matsuzawa Y, Funahashi T, et al: Molecular mechanism of metabolic syndrome X: contribution of adipocytokines, adipocyte-derived bioactive substances. Ann NY Acad Sci, 892: 146-154, 1999.
Suganami T, Ogawa Y: Adipose tissue macrophages: their role in adipose tissue remodeling. J Leukoc Biol, 88: 33-39, 2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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