アドラー(Max Adler)(読み)あどらー(英語表記)Max Adler

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

アドラー(Max Adler)
あどらー
Max Adler
(1873―1937)

オーストリア・マルクス主義の代表的思想家。第一次世界大戦後から1934年までのオーストリア社会民主党左派の理論的指導者。ウィーン大学員外教授。新カント派哲学やマッハの影響を受け、マルクス主義を社会学として理論的、方法論的に定式化を企て修正し、オーストリア・マルクス主義の科学哲学論を展開した。第一次世界大戦後、政治理論の分野でも注目すべき著作を発表し、とりわけケルゼンHans Kelsen(1881―1973)やヘラーとの国家論論争や「社会的民主主義」論などで、プロレタリア独裁の必要性を理論的に認めたが、ボリシェビキ政権に対してはその非民主性と暴力性を批判した。究極目標である社会主義は、人間の意識が社会主義的に変えられて初めて、すなわち「新しい人間」がつくりだされて初めてその実現に近づきうるという考えから、社会主義的文化、教育論を展開し、成人教育運動の分野でも指導的役割を果たした。

[安 世舟]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android