アブラハム(Max Abraham)(読み)あぶらはむ(英語表記)Max Abraham

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

アブラハム(Max Abraham)
あぶらはむ
Max Abraham
(1875―1922)

ドイツの物理学者ポーランドグダニスク(ドイツ名ダンツィヒ)の商家に生まれる。ベルリン大学のプランクのもとで学び、1897年学位を取得、1900年ゲッティンゲン大学私講師となった。その後アメリカのイリノイ大学教授にごく短期間ついたのち、1909年ミラノ大学理論物理学教授となった。第一次世界大戦中はドイツに戻り、テレフンケン社(のちにAEG社に吸収)で電波通信について理論的研究を行い、終戦後、シュトゥットガルト工科大学教授になった。脳腫瘍(のうしゅよう)のためミュンヘンの病院で没した。1902年ごろから、電子の質量は電子の電荷と電磁場との相互作用に還元されるという電磁質量概念を提出し、究極的には力学電磁気学によって基礎づけられるとする電磁的自然観の可能性を展望した。この考えは、1906年のカウフマンの実験によって確証されたと彼は考えたが、やがてより精密な実験で反証され、質量の速度依存性も相対性理論によって正しく説明されることが判明した。彼の著した優れた教科書電気の理論』Theorie der Elektrizität2巻(1904~1905)は、ベクトル記法の普及にも大きく貢献した。

[杉山滋郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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