アマガエル(読み)あまがえる(英語表記)tree frog

翻訳|tree frog

改訂新版 世界大百科事典 「アマガエル」の意味・わかりやすい解説

アマガエル (雨蛙)
tree frog

保護色の好例として知られるニホンアマガエルやミナミアマガエルLitoriaなどアマガエル科Hylidaeのカエル総称。39属719種ほどがサハラ以南のアフリカマダガスカルを除く全世界に分布し,大半が熱帯アメリカの降雨林に生息する。一般にアマガエル類は樹上性の種類が多く,四肢の各指に吸盤が発達していて葉や草の上での生活に適する。環境の変化に応じて巧みに体色を変える保護色の持主鳴囊はのどの下にあって大きく膨らみ,各地でさまざまな鳴声が名の由来となっている。例えば北アメリカ産のコーラスガエル類Pseudacris(英名chorus frog)やクチブエガエルHyla avivoca(英名bird-voiced frog)がそれで,日本では夕立がくると生垣で鳴き立てるニホンアマガエルの声が親しまれている。大半は体長3~5cmの小型で,フロリダ産チビアマガエルLimnaoedus ocularisはわずか1~1.6cmに過ぎない。しかしキューバアマガエルOsteopilus septentrionalisの雌は最大13cmを超え,ニューギニアアマガエルLitoria infrafrenataも15cmを超える大型種。同じニューギニア産のクサアマガエル類は3~5cmの小型種が多く,美しい体色斑紋の持主。熱帯アメリカ産のアマガエル類はアカメキノボリガエル類Aglychnisなど美しい色彩のものが多く,堅い頭骨と棘状(きよくじよう)突起をもつパナマツノガエルHemiphractus panamensisやブルーノイシアタマガエルAparasphenodon brunoiなどの変り種も見られる。また強い毒を分泌したり,地上性で穴を掘って生活する種類もある。アマガエル類には小さな水たまりでも産卵するものが多く,熱帯アメリカでは着生植物の葉に大粒のゼリー状卵塊を産むものや,葉の間にたまったわずかな水に産卵し,幼生は他のカエルの卵や幼生を餌とするものもある。また背中の育児袋で幼生を育てる体長3cmほどのフクロアマガエル類Gastrothecaや,卵を背負って守るゲルジアマガエルFritziana goeldii(体長5cm)もあり,水辺に泥の巣をつくって産卵するカジヤアマガエルHyla faber(体長10cm)もいる。近年消化器系診断薬として用いる活性ペプチドは,オーストラリア産ホワイトアマガエルLitoria caerulea(体長10cm)の皮膚から抽出純化したものである。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アマガエル」の意味・わかりやすい解説

アマガエル
あまがえる / 雨蛙
tree frog

広義には両生綱無尾目アマガエル科に属するカエルの総称で、狭義にはニホンアマガエルの通称。ニホンアマガエルHyla japonicaは北海道から九州まで分布し、朝鮮半島、中国北部にもいる。体表は緑色であるが、周囲の色彩に反応して顕著な体色変化を示し、灰白色となることもある。背面に大形の黒斑(こくはん)が現れる場合が多い。腹面は白色。指端に吸盤があり、雄ののどの下に褐色の鳴嚢(めいのう)がある。体長3~4センチメートルで、低地山地の草むらや樹上で生活し、繁殖期に水田などに集まる。鳴き声は多数の音節からなり、きわめて長い。繁殖期以外にも湿度が高くなると鳴くため、雨の予報になるといわれる。抱接した雌雄は水面を移動しながら数個ずつ産卵するため、卵塊は小さく不定形。総卵数は500個内外。琉球諸島(りゅうきゅうしょとう)には別種のハロウエルアマガエルH. hallowelliiがいる。

 ユーラシア大陸には約10種のアマガエルが分布するが、いずれも同じ属に含まれ、形態、生態はニホンアマガエルに似る。南北アメリカには多数の属や種が分布し、地上性の種や特殊な繁殖様式を示す種が多い。オーストラリア区のものは別の科として扱われる傾向にある。アフリカ、東南アジアには分布しない。

[倉本 満]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アマガエル」の意味・わかりやすい解説

アマガエル
Hylidae; green tree frog

カエル目アマガエル科に属する動物の総称。体長 5cm内外。体色は緑色系統で,指先の先端はふくれて吸盤になっている。多くは樹上生活をするが,地上や地中で生活するものもある。全世界に 550種ほどが知られているが,アフリカのサハラ砂漠以南とマダガスカル島にはいない。南アメリカには特に種類が多く,多数の属に分れている。日本内地には体長 3.5cmほどのアマガエル Hyla arborea japonicaのみが分布し,人家近くにすんで雨の降る前に鳴き出すこと,環境の変化に応じて体色を変えることなどでよく知られている。琉球列島には別の1種がいる。

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百科事典マイペディア 「アマガエル」の意味・わかりやすい解説

アマガエル

アマガエル科およびミナミアマガエル科に属するカエルの総称。35属550種ほどが,サハラ以南のアフリカとマダガスカルを除く全世界に分布。一般にアマガエル類は平地や低山地にすみ,樹上性。ハエ,クモなど小さい昆虫を捕食。雄の咽喉(いんこう)には声嚢があり,雨が近づくと盛んに鳴く。四肢の指先には吸盤が発達し,環境の変化に応じて巧みに体色を変える保護色の持主。日本産のニホンアマガエルは,体長約3〜4cmで雌がやや大きい。

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