アルテミス計画(読み)アルテミスケイカク(英語表記)Artemis program

翻訳|Artemis program

デジタル大辞泉 「アルテミス計画」の意味・読み・例文・類語

アルテミス‐けいかく〔‐ケイクワク〕【アルテミス計画】

Artemis program米国中心となって進めている有人月飛行計画。NASA(米国航空宇宙局)と民間企業、JAXA宇宙航空研究開発機構)、ESA欧州宇宙機関)、CSA(カナダ宇宙庁)などが参加。最終目標は月面基地建設としている。2022年11月、大型ロケットSLSによってアルテミス1号の無人宇宙船オリオンが打ち上げられ、月を周回したのち、同年12月に地球に帰還した。

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知恵蔵 「アルテミス計画」の解説

アルテミス計画

米航空宇宙局(NASA)が予定する月面着陸計画。月の周回軌道上に小型宇宙ステーションを建設し、2024年に有人月面着陸を行うというもの。アルテミスは、ギリシャ神話の女神のこと。アポロンとは双子で、それぞれローマ神話において月の女神ディアナ(英語でダイアナ)、太陽神アポロに相当する。「アポロ計画から50年がたち、再び月に戻る。我々は『アルテミスの世代』だ」として名付けられた。計画では、男女2人が月面に送られ、成功すれば女性宇宙飛行士としては史上初の月面着陸となる。
1950年代末から60年代初めには、米国と旧ソ連冷戦が危機の時代を迎え、両国により核兵器開発や、大陸間弾道ミサイル及び共通の技術に立脚する宇宙開発競争が先鋭化していた。当時の宇宙開発は、57年の人類初の人工衛星スプートニク1号、61年のガガーリン少佐による地球軌道周回などソ連が一歩先を歩んでいた。これを逆転するものとしてケネディ米国大統領(当時)が、60年代のうちに有人月面着陸を行うと演説した。当時のアポロ計画は有人宇宙船により月の軌道を周回するというものだった。しかし、これを機に人類の月面到達を目指すものとなり、国を挙げての宇宙計画が進められた。この結果、69年にはアームストロング船長のアポロ11号が史上初の月面着陸に成功し、以降、73年までに6回にわたって有人月面着陸に成功した。これにより、米国は宇宙開発競争の頂点に立ったが、その後予算削減などで有人月面着陸は途絶えた。60年代末から70年代末には米ソの緊張緩和が進み、75年には宇宙でも米ソ両国の宇宙船がドッキングして共同実験をするなど、競争的側面は薄れていった。米国の重点惑星探査や宇宙ステーション実験などに移り、スペースシャトル計画などが進められた。91年にはソ連が崩壊し、西側諸国が進める国際宇宙ステーション(ISS)建設にロシアも参加した。米国は、2020年までには再び有人月探査を行い、更に火星を目指すなどの計画を04年に発表したが、10年には予算面や実現性などの問題から計画は中止となったものの、改めて30年代半ばには宇宙飛行士を火星軌道まで送るとして、スペースシャトルの後継となる次世代大型ロケット、スペース・ローンチ・システム(SLS)の開発を進めていた。
このような中で、19年3月にペンス米国副大統領は、それまでの計画を大幅に繰り上げて、新たに24年までに宇宙飛行士を月に着陸させる方針を明らかにした。NASAはトランプ大統領から強い要請があったとし、5月には大統領により追加予算も発表された。これまで28年実施としていた計画大きく前倒しするもので、2期目を狙うトランプ政権の業績の目玉としたいという思惑が絡んでいるとの見方もされている。公開されたスケジュールでは、20年に無人での月軌道の周回を行う。22年から、民間宇宙開発企業に委託して、月の周回軌道上に小型宇宙ステーション「ゲートウェイ」建設の資材を数回に分けて運ぶ。24年には宇宙ステーションを中継点として、月面着陸を行う。翌年以降も毎年月面着陸を継続し、28年までに月面基地の建設を開始するとしている。また、開発が遅れていたSLSが間に合わないときは、民間ロケットを使う。

(金谷俊秀 ライター/2019年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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