アレ(Maurice Allais)(読み)あれ(英語表記)Maurice Allais

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

アレ(Maurice Allais)
あれ
Maurice Allais
(1911―2010)

フランスの経済学者。物理学者、歴史学者でもある。パリに生まれる。1933年エコール・ポリテクニク(理工科大学校)を首席で卒業。1年間の軍役を終えて国家鉱山庁に入り、国立高等鉱山学校で勤務したのち、1936年に鉱山部門のエンジニアとなった。1943年から1948年まで鉱山文書統計局局長を務めたが、その間に経済関係の著作を発表する。1943年から1988年まで国立高等鉱山学校で経済分析の教授を務め、その間にパリ大学、ジュネーブ大学などでも経済学を教えた。

 アレは物理学と歴史学に通じていて、経済学を自然科学的手法を用いて考察し、また諸文明の歴史から経済における法則性を導き出すことを目ざした。彼は、一般均衡理論において従来のモデルから脱却し、一般均衡状態と極大効率(市場資源を最大限に有効利用する)とが同意義になることを数学的に厳密に定式化し、立証した。また貨幣需要の理論において、歴史的変化や心理的変化を取り入れて、市場経済における貨幣的条件についての実証的理論をつくりあげた。総合を第一義に考え、理論的分析と応用経済学の結合、経済学とその他の社会科学を結び付けることに努力した。

 「市場と資源配分の効率性に関する理論の先駆的研究」によって、1988年にノーベル経済学賞を受賞した。1983年にノーベル経済学賞を先に受賞したG・ドブリューは彼の門下生である。

[金子邦彦]

『M・シェンバーグ編、都留重人監訳『現代経済学の巨星 上』(1994・岩波書店)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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