アレン(脂肪族不飽和炭化水素)(読み)あれん(英語表記)allene

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

アレン(脂肪族不飽和炭化水素)
あれん
allene

普通は脂肪族不飽和炭化水素をいい、命名法ではプロパジエンとよぶが、この骨格をもつ誘導体をアレン誘導体、あるいは略してアレンということがある。アレンの分子では二つの二重結合が隣り合って存在している。アレンの二重結合の長さは131ピコメートルで、通常の二重結合の134ピコメートルよりも短い。アレンのように二重結合が累積して結合している化合物を一般にクムレンと称し、炭素の鎖が直線状に伸びた構造をとるが、概して安定ではない。アレンを塩基性条件下で、たとえば液体アンモニアナトリウムアミドと処理すると、より安定な異性体であるメチルアセチレン(プロピンまたはアリレンという)に異性化する。

 メチルアセチレンは金、銀などと不溶性のアセチリドを生成し、グリニャール試薬は種々の誘導体の合成に用いられる。またアレン誘導体は、不斉炭素原子がなくても光学活性を示すことができる。

[徳丸克己]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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