アンドリュース(Thomas Andrews)(読み)あんどりゅーす(英語表記)Thomas Andrews

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

アンドリュース(Thomas Andrews)
あんどりゅーす
Thomas Andrews
(1813―1885)

イギリスの化学者。北アイルランドベルファスト商人の家庭に生まれる。生地で教育を受けたのち、グラスゴーとパリで化学を、ダブリンエジンバラで医学を学び、1835年エジンバラ大学で医学博士の学位を得た。その後ベルファストで開業医となった。1842年に結婚し、その3年後ベルファスト大学クィーンズカレッジの副学長となり、また1849年から1879年まで化学教授の席にあった。1849年には王立協会会員に選出された。彼の研究は、金属の不動態に始まるが、その後、中和熱などの熱化学、オゾンの分子構成の研究を経て、1861年以後、気体の状態変化に関する実験的研究に移った。この研究は1869年の論文「物質の気態および液態の連続性について」で集約された。彼は、気体を種々の一定温度のもとで圧縮した場合、ある温度以上では気体は液化せずに気体状態を持続することを、炭酸ガス酸化窒素アンモニアなどについてみいだし、この温度を臨界温度と名づけた。臨界状態発見を伴った彼の気体の相変化に関する包括的研究は、その後のファン・デル・ワールスによる状態方程式理論ギブス相平衡の理論、永久気体の液化の実現などに重要な契機を与えることになった。

[井上隆義]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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