日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
アーノルド(Matthew Arnold)
あーのるど
Matthew Arnold
(1822―1888)
イギリスの詩人、批評家。名門ラグビー校の名物校長T・アーノルドの息子として生まれ、ラグビーからオックスフォード大学へ進学。『さまよえる宴客』(1849)、『エトナ山上のエンペドクレス』(1852)、『詩集』(1853)、『新詩集』(1867)は、ロマン主義への幻滅と憧憬(しょうけい)、科学の脅威と宗教の衰微などに悩まされる19世紀中葉の多感な知識人の内面を歌っている。「ドーバー海岸」「サーシス」などの詩はとくに有名。後半生は『批評論集』(1865、1888)、『教養と無秩序』(1869)、『文学と教義』(1873)、『アメリカ文明』(1888)などを発表、当代最重要な批評家として活躍。近代の文学、芸術における批評的知性の重要性を説いて、広い視野からイギリス文化の地方性を批判、T・S・エリオットなど後代の批評家に影響を与えた。オックスフォード大学詩学教授を務めながら、教育制度改善を進言する視学官でもあった。
[高橋康也]
『矢野峰人著『アーノルド論攷』(1947・全国書房)』
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