イエスズメ

改訂新版 世界大百科事典 「イエスズメ」の意味・わかりやすい解説

イエスズメ (家雀)
house sparrow
Passer domesticus

スズメハタオリドリ科の鳥。全長約16cmでスズメより少し大きい。雄はスズメに似ているが頭頂が灰色,のどの黒斑はスズメより大きく上胸部まで広がる。雌は体全体が黄色みを帯びた褐色で,のどに黒斑がない。南ヨーロッパおよび地中海周辺地域から中央アジアのステップにかけて分布していたが,人の農耕生活と結びついて西ヨーロッパ一帯に広がり,19世紀には東ヨーロッパへと広がった。東は現在アムール地方まですんでいる。さらに移住者に伴って,南・北アメリカ,南アフリカオーストラリアへも広がった。人里と農耕と強く結びついた鳥で,日本のスズメと同じ場所を占めている。生活力はスズメより強く,スズメを押しのけて分布を拡大している。1夫1妻で,わりと固まって繁殖し,巣は建物の穴や樹洞につくり,またしばしばツタの中や,木の茂みの中へ球形の巣をつくる。1腹の卵は2~7個。繁殖期には昆虫や幼虫類をよくとるが,冬は農耕地に群れをつくって過ごし,おもに種子穀物を食べている。
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百科事典マイペディア 「イエスズメ」の意味・わかりやすい解説

イエスズメ

ハタオリドリ科の鳥。翼長7cm。スズメに似るが少し大きく,ほおに黒斑がない。雌は雄と羽色が異なり全体的に褐色。人間による農耕の拡大とともに生息地を拡げ,ユーラシアに広く分布。現在は北米南米,オーストラリアにも移入されたものがいる。生態はスズメに似て,市街地や農耕地の集落にすむ。ヨーロッパではイエスズメが市街地などにすみ,スズメはまわりの林にいる。ヨーロッパの公園などに見られるスズメは本種。近年,日本でもイエスズメの生息が確認され,将来の分布拡大が考えられる。

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世界大百科事典(旧版)内のイエスズメの言及

【スズメ(雀)】より

…アジア南東部,台湾,日本,サハリンなどに分布し,日本では本州中部以北の林で繁殖し,秋にスズメの群れに混じって水田や畑に飛来する。なお,ヨーロッパやインドで人家にすみついているのは近縁種のイエスズメP.domesticus(イラスト)で,スズメは樹林地にいる。
[スズメ目]
 スズメ目Passeriformes(英名passerine)は全世界の鳥類約8600種のうちの約6割を含む大きいグループで,かつては燕雀目(えんじやくもく)とも呼ばれた。…

【鳥類】より

…この季節的変化は,主として脳下垂体前葉から分泌される生殖腺刺激ホルモンによって支配されている。
[脳]
 脳は脊椎動物の中で哺乳類に次いで(あるいは同等に)発達しており,体重のほぼ等しい爬虫類と比べると,鳥の脳は10倍以上大きい(脳の体重に対する比率はトカゲ0.55%,ネズミ2.8%,イエスズメ4.3%)。小脳と視葉はとくによく発達している。…

※「イエスズメ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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