日本大百科全書(ニッポニカ) 「イオ(ギリシア神話)」の意味・わかりやすい解説
イオ(ギリシア神話)
いお
Īō
ギリシア神話の女神官。アルゴスの王イナコスとメリアの娘で、ヘラ女神に仕える。彼女の美しさにひかれてイオと交わったゼウスは、妻ヘラの怒りを恐れてイオを牝牛(めうし)に変えた。しかしそれを見破ったヘラは、牝牛を奪うと多眼の怪物アルゴスに監視させた。イオに同情したゼウスがヘルメスに命じてアルゴスを退治させると、ヘラは虻(あぶ)を送って彼女を苦しめたため、イオはこれに追われて世界をさまよい歩いた。そしてボスフォロス(牝牛の渡しの意。ボスポラス海峡)を渡ってアジアへ行きカウカソスの岩山に縛られたプロメテウスに会った。そこで彼から幸運の預言を受けて力づけられたイオは、ついにエジプトにたどり着きゼウスによって人間の姿に戻された。そののちイオは、ダナオスの50人の娘ダナイデスたちの祖先であるエパフォスを生んだ。なお、彼女はエジプト人の間でイシス女神と同一視され、死後は月の女神として崇拝された。
[小川正広]