日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ウィルソン(Kenneth Geddes Wilson)
うぃるそん
Kenneth Geddes Wilson
(1936―2013)
アメリカの理論物理学者。ハーバード大学、カリフォルニア工科大学に学び、カリフォルニア工科大学、ヨーロッパ原子核研究機構(CERN(セルン))、コーネル大学を経て、1963年ハーバード大学教授となる。そのころ、相転移・臨界現象の問題は、統計力学・物性理論分野の中心的課題の一つとされていた。臨界点近傍でのスケーリング則の成立が臨界現象に本質的なことである点については、現象論的にはカダノフLeo P. Kadanoff(1937― )によって1966年に明らかにされていた。そこでウィルソンは1971年に、ミクロレベルに歩を進めて、ゲルマン、ロウFrancis Low(1921―2007)による「場の量子論におけるくりこみ群の方法」(1954)を土台に、くりこみ群の理論を直観的・物理的に構築し、臨界指数を具体的に求める方法を与えた。この理論は、非平衡理論分野その他に広く適用可能性を有し、理論物理学に新しい視座を与えるものとなった。「相転移に関連した臨界現象に関する理論」により、1982年ノーベル物理学賞を受賞した。
[荒川 泓]
[参照項目] |
| | | | | |