改訂新版 世界大百科事典 「ウェストバージニア」の意味・わかりやすい解説
ウェスト・バージニア[州]
West Virginia
アメリカ合衆国中東部の鉱業州。略称W.Va.。連邦加入1863年,35番目。面積6万2628km2,人口185万2994(2010)。州都および最大都市はチャールストン。南部州の中では最北の州の一つで,気候は内陸性の湿潤温暖気候である。〈マウンテン・ステート〉の別名をもつように,主としてアパラチア山脈,アレゲニー台地からなり,開析の進んだ谷部に小集落が散在し,地域全体として孤立性が強かった。もともとバージニア州の一部であり,アレゲニー台地を越えての開拓は17世紀後半より始まった。バージニア州の平野部とこの山地地域は自然的にも文化的にも異なり,18世紀後半には分離運動がおこり,1861年の南北戦争に伴うバージニア州の連邦脱退時に,ウェスト・バージニアの分離独立が行われた。もともと奴隷人口は少なく,今日も黒人比率は3.3%と低い。山がちの地形条件は植民の障害となったが,南北戦争後に鉄道が開通し鉱物・林産資源の開発が進んだ。特にアパラチア炭田の石炭(おもに歴青炭)は重要で,今日もなお全米有数の産出量を誇る。その他天然ガス,石油,粘土,セメント,岩塩など鉱業は州経済に重要な役割をもつ。工業では合成繊維,プラスチックが中心である。農業は多角化しており,酪農を中心に,リンゴ,モモ,タバコ,トウモロコシなどの栽培がみられる。州の75%が森林に覆われており,カシ,ヒッコリーなどの硬木の産出も多い。孤立時代の遺産であるダルシマーやバイオリンなどの伝統的な楽器,バラード,手工芸などが保存されており,豊かな自然とともに観光客を引きつけている。
執筆者:正井 泰夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報