ウェブスター‐アシュバートン条約(読み)うぇぶすたーあしゅばーとんじょうやく(英語表記)Webster-Ashburton Treaty

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ウェブスター‐アシュバートン条約
うぇぶすたーあしゅばーとんじょうやく
Webster-Ashburton Treaty

1842年8月9日ワシントンで締結されたアメリカ・イギリス間の条約。同年2月から合衆国国務長官ウェブスターとイギリスの全権代表アシュバートン卿(きょう)とにより、次の懸案事項の解決のために両国間交渉が行われ、条約を締結するに至った。すなわち、(1)1837年に起きたカナダ暴動の際、バッファロー近くに停泊中のアメリカ船カロライン号が暴徒を支援したとして、イギリス側に沈められたことで生じた米英間の紛争カロライン号事件)、(2)これに関連し、従来から激化し、1783年のパリ条約でも未決定であったアメリカ西北部国境Maine-New Brunswick frontierをめぐる紛争、(3)奴隷貿易取締りに関する問題、の解決である。

 カロライン号事件については、8月9日の条約締結の数日前、両国代表間で交換公文が交わされ、事件を自衛権の行使と主張するイギリスに対し、アメリカは、自衛権はその必要が緊急かつ圧倒的で、手段の選択、思慮の時間のない場合に限ると主張した。他方、西北部国境問題については、セント・ローレンス川からウッズ湖への境界の決定を含む国境画定条約が成立。奴隷貿易の取締りについては、アフリカ沿岸に対し、各自が取締りのため、両国のそれぞれ法律権利および義務を実施するため共同巡航艦隊を派遣する旨を規定した奴隷貿易取締条約が成立した。ウェブスターは、アメリカ上院の承認を確保するためこれらの条約を一つにまとめることを提案し、実現した。

[經塚作太郎]

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