ウェルズ(英語表記)Orson Welles

デジタル大辞泉 「ウェルズ」の意味・読み・例文・類語

ウェルズ(Orson Welles)

[1915~1985]米国の映画監督・俳優。1938年、放送劇中で火星人襲来を臨時ニュースの形式をとって流したために世間をパニックにおとしいれた。監督・主演した「市民ケーン」のほか、俳優として「第三の男」などに主演。

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精選版 日本国語大辞典 「ウェルズ」の意味・読み・例文・類語

ウェルズ

(Herbert George Wells ハーバート=ジョージ━) イギリス文明批評家、小説家。主著「世界文化史大系」「生命の科学」「キップス」「宇宙戦争」。(一八六六‐一九四六

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改訂新版 世界大百科事典 「ウェルズ」の意味・わかりやすい解説

ウェルズ
Orson Welles
生没年:1915-85

アメリカの映画監督,俳優。弱冠26歳にして自作自演による《市民ケーン》(1941)で衝撃のデビュー。天才監督の名をほしいままにするが,ハリウッド商業主義と折り合わず,第2作《偉大なるアンバーソン》(1942)は2時間11分を1時間22分に短縮され,《恐怖の旅路》(1943)は途中で監督を降ろされる。さらに,〈赤毛のリタ〉の愛称で人気絶頂の女優リタ・ヘイワースを金髪の悪女に仕立てた《上海から来た女》(1946)は無残な興行成績に終わり,B級映画会社リパブリックで得意のシェークスピア物《マクベス》(1948)を手がけるがこれもふるわず,ついにハリウッドから追い出されたかっこうでヨーロッパ各地を流浪する。《オセロ》(1949-52)はイタリアとモロッコで,《アーカディン氏》(1955)はフランスとスペインとドイツとイタリアで,《審判》(1962)はフランスとユーゴスラビアで,《真夜中の鐘》(1966)はスペインで,それぞれ撮って,ほとんど国籍不明の映画作家となった。その間に撮った唯一のアメリカ映画《黒い罠》(1958)も製作会社ユニバーサルによって手を入れられ,ウェルズ自身は自分の作品と認めていない。その他の作品はフランスのテレビ映画《不滅の物語》(1968),フランスとイランの合作映画《オーソン・ウェルズのフェイク》(1975)など。資金不足のために未完の作品も数多くある。

 ウィスコンシン州生れ。演劇にとりつかれ,ニューヨークで,J.ハウズマン,J.コットンらの演劇人と親交を結び,黒人版《マクベス》の演出(1936),劇団〈マーキュリー劇団〉の結成(1937)を経て,1938年10月30日,アメリカ中をパニック状態に陥れた史上名高いラジオドラマ《火星人襲来》(CBSラジオの音楽放送が突然中断し,宇宙船の着陸を伝える臨時ニュースから始まるというショッキングな形式であった)によって,23歳のウェルズは一躍脚光を浴び,〈神童〉とうたわれ,劇団ごとハリウッドに迎えられることになる。《市民ケーン》における類例のない〈パンフォーカス〉撮影,《上海から来た女》の〈鏡の間〉のモンタージュ,《偉大なるアンバーソン》《黒い罠》における息の長い〈ワンシーン・ワンカット〉撮影等々,革新的な映画技法を駆使する一方,チャップリンの《殺人狂時代》の原案も彼の手になるものであり,また性格俳優として自作以外にも数々の映画に出演,C.リード監督《第三の男》(1949)のハリー・ライムを頂点とする彼ならではの強烈な〈怪物的〉キャラクターを演じている。詩人J.コクトーは〈子どもの目つきをした巨人〉とも呼んでいる。
執筆者:

ウェルズ
Herbert George Wells
生没年:1866-1946

イギリスの小説家,歴史家,科学評論家。ケント州ブロムリーに貧しい瀬戸物商の子として生まれる。私立商業学校卒業のみで生活のため服地屋の丁稚(でつち),学校の助教員,薬剤師助手などの職につき,1884年ようやく奨学金を得てロンドンの理科師範学校(現在のロンドン大学理学部)に入学。T.H.ハクスリーなどの講義に列し,当時の科学万能の世界にひたり,88年優等で卒業,しばらく理科の教師をしたが,健康を損ねジャーナリズムに転じた。

 ほぼ同時に小説を書きはじめ,《タイム・マシン》(1895)で好評を博し,《透明人間》(1897),《宇宙戦争》(1898)などの科学小説を続々発表,SFの歴史において,期を画した。1903年にはフェビアン協会に入会する。その独特の合理的社会観を《モダン・ユートピア》(1905),《新マキアベリ》(1911)などの文明批評的な作品で表明する一方,《キップス》(1905),《トーノ・バンゲー》(1909),《ポリー氏の閲歴》(1910)といった優れた伝統的小説も数多く発表している。

 第1次大戦を契機として人類や世界の運命に対する関心を急速に深め,一種の〈知的国際連盟〉による世界救済を考え,科学と合理主義の進歩として人類史を考える《世界文化史大系》(1920,その縮小版《世界史概観》は1922刊行)を発表し好評を博する。さらにこの理想実現のために《生命の科学》(共著1929-31),《人類の労働と富と幸福》(1932),《世界百科事典》(1936)などを発表し続けた。さすがに第2次大戦直前以後の《世界の頭脳》(1938),《人類の運命》(1939),《新世界秩序》(1940)などにはペシミスティックな調子が強くなっている。著書100冊を超える彼の生涯は,ビクトリア時代の上昇階級であった下層中産階級の一員として,普通教育の普及の波の中で,科学と知性による迷信の排除と人類の合理的進歩というその基本的信念を語り続けたものということができる。ウェルズはSFの祖の一人として日本でも広く読まれているが,SF以外では1938年に翻訳された《世界文化史大系》や翌年に新書判として翻訳された《世界史概観》(当時は《世界文化史概説》として出版)が,日中戦争下の自由主義者のあいだで熱心に読まれた。
執筆者:

ウェルズ
Horace Wells
生没年:1815-48

アメリカの歯科医。1844年はじめて亜酸化窒素(笑気)ガスを用いて無痛抜歯に成功したが,その翌年の1月マサチューセッツ総合病院で行われた公開手術では失敗した。麻酔法の優先権をめぐってW.T.G.モートンらとの間に争いも起こり,以来失意の日々を過ごし,48年1月ニューヨークに転居,そこでも引き続いてエーテル,クロロホルムなどを自らに試みていたが,ついにはその中毒患者になった結果ひき起こされた傷害事件で逮捕され,獄房の中で自殺した。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウェルズ」の意味・わかりやすい解説

ウェルズ
Welles, Orson

[生]1915.5.6. ウィスコンシン,ケノーシャ
[没]1985.10.10. カリフォルニア,ロサンゼルス
アメリカ合衆国の俳優,映画監督,制作者,脚本家。フルネーム George Orson Welles。9歳でピアニストの母を,1930年に発明家の父を亡くした。1926年イリノイ州ウッドストックにあるトッド・スクールに入学した。1931年にトッド・スクールを卒業,短期間シカゴ美術館で学んだのちアイルランドのダブリンにあるゲート劇場のオーディションに受かり,16歳で初舞台を踏んだ。その後アビー劇場にも出演した。1934年に『ロミオとジュリエット』Romeo and Julietのティボルト役でニューヨークデビューを果たし,1937年にマーキュリー劇団を結成。1938年に CBSで,ハーバート・ジョージ・ウェルズ原作のラジオドラマ『宇宙戦争』The War of the Worldsを演出,その迫真性によって聴取者を大パニックに陥らせた。1939年映画監督としてハリウッドに招かれ,1941年に初監督作品『市民ケーン』Citizen Kaneを発表,フラッシュバックの多用による大胆な物語構成法や,広角ショットパンフォーカス撮影による 1ショット=1シークエンスの新演出は世界の映画に大きな影響を与えた。その後のおもな作品に『偉大なるアンバーソン家の人々』The Magnificent Ambersons(1942),フィルム・ノアールの『上海から来た女』The Lady from Shanghai(1948),『マクベス』Macbeth(1948),『黒い罠』Touch of Evil(1958),『審判』Le Procès(1962)などがある。俳優としては,『第三の男』The Third Man(1949)など自作以外の映画にも多数出演した。

ウェルズ
Wells, Herbert George

[生]1866.9.21. ケント,ブロムリー
[没]1946.8.13. ロンドン
イギリスの小説家,評論家。服地屋の店員から身を起し,ロンドンの理科師範学校で T. H.ハクスリーの教えを受けた。教師として身を立てるうち,未来小説『タイム・マシン』 The Time Machine (1895) で文壇に登場。『透明人間』 The Invisible Man (97) ,『宇宙戦争』 The War of the Worlds (98) などの SFを得意としたが,のちに写実主義に向い,『キップス』 Kipps (1905) で下層中流階級の生活を喜劇的に描き,『トーノ・バンゲー』 Tono-Bungay (09) では 19世紀イギリス社会崩壊の諸相を題材とした。予言者的言説を含む文明批評家としても知られ,『世界史大系』 The Outline of History (20) その他の歴史的著述もあり,百科全書的ジャーナリストとしてめざましい活躍をした。一時フェビアン協会の会員であったこともあり,文学と社会の接触に強い関心をもっていた。

ウェルズ
Wells, Horace

[生]1815.1.12. バーモント,ハートフォード
[没]1848.1.24. ニューヨーク
アメリカの歯科医で,麻酔の先覚者。 1836年コネティカット州ハートフォードで開業していたが,イギリスの化学者 H.デービーが 1799年に笑気 N2O (亜酸化窒素) の麻酔性を報告しているのに注目し,1844年まず自分の無痛抜歯に試用して成功,15例の臨床例を得て翌年1月,ボストンのマサチューセッツ総合病院で公開実験をしたが失敗した。 46年 10月,W.モートンが同病院でエーテルを使った麻酔実験に成功したのち,ウェルズは各種の麻酔薬の特性を調べているうち,ついにその中毒症となり,性格破綻者となってニューヨークで獄中死した。しかし,彼の着想はのちに高く評価され,記念碑が建てられた。

ウェルズ
Wells

イギリスイングランド南西部,サマセット県北東部,メンディップ地区の町。ブリストルの南約 30km,メンディップ丘陵南西麓にある歴史的な宗教都市で,12世紀創建の初期イギリス・ゴシック様式のウェルズ大聖堂で有名。農産物の集散地で,小規模ながら,印刷業,採石業,電気機械工業も行なわれる。人口 1万406(2001)

ウェルズ
Welles, Sumner

[生]1892.10.14. ニューヨーク
[没]1961.9.25. ワシントン
アメリカの政治家。ハーバード大学卒業。おもにラテンアメリカ諸国の外交官をつとめたのち,1933年国務次官補,37年国務次官に任命され,米州諸国外相会議に出席するなど,1930年代から第2次世界大戦期にかけての対中南米外交に重要な役割を演じた。

ウェルズ
Welles, Gideon

[生]1802.7.1. コネティカット,グラステンベリー
[没]1878.2.11.
アメリカのジャーナリスト,政治家。奴隷問題をめぐり共和党創設に貢献。南北戦争中は海軍長官 (1861~69) 。彼の日記,"Diary of Gideon Welles"は南北戦争の重要な記録。

ウェルズ
Wells, Charles Jeremiah

[生]1800頃.ロンドン
[没]1879.2.17. マルセイユ
イギリスの詩人。劇詩『ヨゼフとその兄弟』 Joseph and His Brethren (1823) は,その華麗な文体で知られている。

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百科事典マイペディア 「ウェルズ」の意味・わかりやすい解説

ウェルズ

米国の俳優,映画監督。ウィスコンシン州生れ。舞台俳優としてデビューし,のち劇団を組織。1938年のラジオ・ドラマ《火星人襲来》は,現実味あふれる演出によって全米をパニックに陥れた。次いで《市民ケーン》を監督主演し,以降映画界で活躍するが,ハリウッドの商業主義と折り合わず,ヨーロッパ各地で映画を撮った。革新的な監督手法を駆使する一方,自作以外にも数々の映画に出演。主な監督作品に《偉大なるアンバーソン家の人々》(1942年),《マクベス》(1948年),《オーソン・ウェルズのオセロ》(1952年),《黒い罠》(1963年),《オーソン・ウェルズのフェイク》(1975年)などがある。俳優としてはキャロル・リード監督《第三の男》(1949年)のハリー・ライムなどの怪物的な演技によって知られる。
→関連項目シュナイダーハーストワイズ

ウェルズ

英国の小説家,文明批評家。理科師範学校(現ロンドン大学理学部)に学び教師を務めたこともある。進化論的・社会主義的世界観をもとに独特の文明批評で大きな影響を与えた。未来小説またはSFの元祖としては《タイム・マシン》(1895年),《透明人間》(1897年),《宇宙戦争》(1898年)などで知られるが,ほかに《キップス》や《トーノ・バンゲー》などの伝統的小説,また《世界文化史大系》(1920年)や《生命の科学》(J.ハクスリーと共著)等多数の著作がある。
→関連項目インベーダー

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旺文社世界史事典 三訂版 「ウェルズ」の解説

ウェルズ
Herbert George Wells

1866〜1946
イギリスの作家・文明批評家・歴史家
徒弟時代に独学で勉強し,師範学校で自然科学を学び,初め教育ジャーナリズムに従事。1895年『タイム−マシン』で作家活動にはいり,しだいに科学小説から文明批評・社会小説に移った。フェビアン協会にも加わったがのち脱退。世界国家の実現を夢みて代表作『世界文化史』を著述(1920)したが,晩年は厭世的となった。ほかに『宇宙戦争』(1908),『トーノー=バンゲー』(1909)などの著作がある。

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世界大百科事典(旧版)内のウェルズの言及

【ウェルズ大聖堂】より

…イギリス南西部,サマセット州のウェルズにあるゴシック様式の大聖堂。初期イギリス様式Early English Styleの代表例。…

【インベーダー】より

…一般に外部からの侵入者を意味するが,とくにSFにおいて宇宙からの侵略者に限定して使われることが多い。H.G.ウェルズの《宇宙戦争》(1898)は火星からの侵略を扱った古典的名作で,この作品のパロディとしてブラウンF.Brownの《火星人ゴーホーム》(1955)やプリーストC.Priestの《スペース・マシン》(1976)のような傑作が書かれた。また38年にO.ウェルズがH.G.ウェルズの《宇宙戦争》をもとに書いた放送劇が,これを現実の侵略を実況したものと勘ちがいしたアメリカ市民に恐慌をもたらしたことは有名である。…

【市民ケーン】より

…1941年製作のアメリカ映画。〈マーキュリー劇団〉の主宰者で,1938年10月30日,ハロウィン(万聖節)の前夜に放送してアメリカ中をパニック状態におとしこんだラジオ・ドラマ《火星人襲来》以来すっかり有名になり,〈ワンダーボーイ(神童)〉の名をほしいままにしていた当時25歳のオーソン・ウェルズが,チェース・ナショナル銀行と並ぶ大株主だったネルソン・ロックフェラーの推薦により,経営上の危機を迎えていたハリウッドの映画会社RKOに招かれてつくった初の監督作品。新人監督としては異例の6本契約を結び,製作に関するすべての権限と自由を保証されてつくったことでも伝説的な映画である。…

【第三の男】より

…1949年製作のイギリス映画。アントン・カラスのチターの演奏だけによる哀感あふれる音楽と,オーソン・ウェルズが演じたハリー・ライムという強烈な人物像によって世界中のファンを魅惑し,キャロル・リード監督の名を一躍高からしめたスリラー映画の名作。〈冷戦〉をテーマに作家のグレアム・グリーンが敗戦直後(1947)の米英仏ソ4ヵ国管理下のウィーンの闇市(ブラック・マーケット)を描いたオリジナルストーリーから,グリーン自身が脚色。…

【チャップリンの殺人狂時代】より

…チャールズ・チャップリン監督・主演。第1次大戦直後に現れたフランスの殺人鬼〈青ひげランドリュ〉の事件をチャップリン主演で喜劇化しようとしたもので,オーソン・ウェルズの原案による。絞首台を前にして,映画の中の殺人狂ムッシュー・ベルドゥーが語る〈人間を1人殺せば絞首刑になるが,無数に殺せば勲章をもらえる〉というアイロニーは,〈青ひげの変質的な殺人がチャップリンの錬金術によって一つの社会的必然に変えられた〉と評され,ヨーロッパ,とくにパリで大好評だったが,アメリカでは封切が〈赤狩り〉の台頭と時を同じくし,チャップリン映画としてははじめての興行的大失敗に終わった。…

【ハースト】より

…〈ハースト王国〉はその後衰退したものの,彼の死亡した51年現在で全日刊紙発行部数の9.8%(18紙)を傘下に収めていた。オーソン・ウェルズの監督・主演による映画《市民ケーン》のモデルでもある。【香内 三郎】。…

【宇宙人】より

…1835年に新聞《ニューヨーク・サン》が大望遠鏡による月人観測のうそ記事を掲載して大騒ぎとなり,77年にG.V.スキャパレリが火星の筋模様を発見し,P.ローエルが《火星》(1895)という本でそれを運河であると主張してからは宇宙人の存在に関する議論が絶えることはなくなった。それも長い間火星人に関心が集中し,H.G.ウェルズが《宇宙戦争》(1898)において,重力と酸素量の関係で〈タコ型〉の火星人を想像してからは,この形の宇宙人が人々に親しまれるようになった。やがて,火星に知的生物が存在しえないことがわかると,遠い恒星系の惑星に関心が移り,宇宙人の想像図も多様をきわめるものとなった。…

【SF】より

…この系譜はブラッドベリ,ライバーF.Leiberなど現代のアメリカSFにまで一つの流れを形成しており,恐怖小説誌《ウィアード・テールズ》(1923‐54)はアメリカの大衆小説としてのSFを生む重要な土壌ともなった。しかし,真にSFに強力な方向性を与えたのは,フランスのベルヌとイギリスのH.G.ウェルズである。ベルヌは《月世界旅行》(1865)や《海底二万リーグ》(1870)において,科学技術による未来の夢と未知の世界への冒険をおおらかに展開し,自国以上にアメリカで大きな人気を得た。…

【SF映画】より


[H.G.ウェルズからB級映画へ]
 SF映画の歴史は,1895年,イギリスの作家H.G.ウェルズが彼の空想科学小説《タイム・マシン》(1895)のイメージを,友人の科学者R.ポールの協力のもとに,当時発明されたばかりの〈映画〉と幻灯を駆使して,遊園地のびっくりハウス的な幻覚ショーを催したときに始まる。これは一種の疑似体験としての世界最初の視聴覚メディアの実験でもあった。…

【タイム・マシン】より

…〈航時機〉とも訳される。過去や未来を訪れるための空想的な装置で,H.G.ウェルズ《タイム・マシン》(1895)にはじめて登場する。しかしウェルズ作品の主眼は文明批評にあり,その点では機械によらぬ時間遡行を扱ったマーク・トウェーン《アーサー王宮廷のヤンキー》(1889)と同様に,タイム・マシンの純論理的分析を行ったものではなかった。…

【透明人間】より

…H.G.ウェルズの作品《透明人間》(1897)によって広まったSFのテーマ。いわゆる〈隠れ蓑(みの)〉の類による肉体の消身伝説や物語は昔から洋の東西に数多いが,そこに体内色素の消去や光の屈折率操作など擬似科学的要素を最初に持ちこんだのがウェルズである。…

【ユートピア】より

…宇宙や極地や海底の開発を通して,空想的な予言が真実味をおびるようになり,極端に発展した機械文明が,人間の物理的限界をこえて浮遊しうるような超越的ユートピア像が提出された。その一例がH.G.ウェルズのユートピア《モダン・ユートピア》(1905)でこの作品は冷静な社会分析をふくみつつもSF世界を開示して多数の読者を獲得した。 第2には,反ユートピア(ディストピア)論の登場である。…

【手術】より

…一方それまで医学において遅れていたドイツのベルリンにもCollegium medicochirurgicumが設立され,ようやく医学の一分野としての外科の立場が認められるようになった。 19世紀に入って,アメリカのロングCrawford Williamson Long(1842),ウェルズHorace Wells(1844),W.T.G.モートン(1846)やイギリスのシンプソンJames Young Simpson(1847)らによる全身麻酔法,L.パスツール(1861)の腐敗現象は空気中の微生物によるという報告に基づいたI.P.ゼンメルワイス(1847),J.リスター(1867)らによる制腐消毒法,ベルクマンErnst von Bergmann(1886)やシンメルブッシュCurt Schimmelbusch(1889)による無菌法,エスマルヒJohann Friedrich August von Esmarch(1823‐1908)による駆血帯の使用は,その後の外科手術を飛躍的に進歩させることとなった。すなわち,ランゲンベックBernhard Rudolf Conrad von Langenbeck(1810‐87)の子宮全摘出術,ティールシュCarl Thiersch(1822‐95)の植皮術,フォルクマンRichard von Volkmann(1830‐89)の直腸癌手術,ビルロートTheodor Billroth(1829‐94)の胃切除術の成功例が報告されるようになった。…

【手術】より

…一方それまで医学において遅れていたドイツのベルリンにもCollegium medicochirurgicumが設立され,ようやく医学の一分野としての外科の立場が認められるようになった。 19世紀に入って,アメリカのロングCrawford Williamson Long(1842),ウェルズHorace Wells(1844),W.T.G.モートン(1846)やイギリスのシンプソンJames Young Simpson(1847)らによる全身麻酔法,L.パスツール(1861)の腐敗現象は空気中の微生物によるという報告に基づいたI.P.ゼンメルワイス(1847),J.リスター(1867)らによる制腐消毒法,ベルクマンErnst von Bergmann(1886)やシンメルブッシュCurt Schimmelbusch(1889)による無菌法,エスマルヒJohann Friedrich August von Esmarch(1823‐1908)による駆血帯の使用は,その後の外科手術を飛躍的に進歩させることとなった。すなわち,ランゲンベックBernhard Rudolf Conrad von Langenbeck(1810‐87)の子宮全摘出術,ティールシュCarl Thiersch(1822‐95)の植皮術,フォルクマンRichard von Volkmann(1830‐89)の直腸癌手術,ビルロートTheodor Billroth(1829‐94)の胃切除術の成功例が報告されるようになった。…

※「ウェルズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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