ウォルポール(Sir Hugh Seymour Walpole)(読み)うぉるぽーる(英語表記)Sir Hugh Seymour Walpole

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ウォルポール(Sir Hugh Seymour Walpole)
うぉるぽーる
Sir Hugh Seymour Walpole
(1884―1941)

イギリスの小説家、批評家。3月13日、ニュージーランド牧師の子として生まれる。カンタベリーのキングズ・スクール、ケンブリッジのエマニュエル・カレッジに学んだ。大学時代から小説を書き始め、卒業後一時牧師代理や学校教師を経験するが飽き足らず、1909年ロンドンに出て処女作『木馬』により作家となった。ヘンリー・ジェームズを敬慕し、またA・トロロープに傾倒して、トロロープ風の写実的な小説から出発し、しだいにロマンチックな作風に変わり、ときには無気味な残酷趣味を発揮することもある。巧みな語り口により流行作家としての名声を博し、小説作品だけでも40冊を超える。『ペリン氏とトレイル氏』(1911)、『大寺院』(1922)、『赤毛の男の肖像』(1925)、『ジョン・コーニーリアス』(1937)などがある。また大衆の人気をよんだ『ヘリー家物語』四部作(1930~33)、少年期の自伝的要素の濃い『ジェレミー』三部作(1919~27)もある。大の読書家で本好きの彼は、古今のイギリス小説に通じ、その談論は英米の読者層に歓迎され、ロンドン文壇の中心的存在だった。またW・スコットの手稿をはじめ、本の収集でも名高い。37年ナイトに叙せられ、生涯独身で、41年6月1日、湖水地方ケズウィックの隠棲(いんせい)地で死去

[佐野 晃]

『西田琴訳『ジェレミー 幼児の生い立ち』(1937・岩波書店)』

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