ウォンバット(読み)うぉんばっと(英語表記)wombat

翻訳|wombat

精選版 日本国語大辞典 「ウォンバット」の意味・読み・例文・類語

ウォンバット

〘名〙 (wombat) 有袋類のウォンバット科の哺乳類総称ヒメウォンバット、キタケバナウォンバット、ミナミケバナウォンバットの三種がある。オーストラリアタスマニアの低木林、草原および砂丘地帯にすむ。体長一メートル内外で、外形習性アナグマに似る。体毛は黒または灰色性質は温和で、日中は巣の穴にひそみ、夜活動する。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「ウォンバット」の意味・読み・例文・類語

ウォンバット(wombat)

有袋目ウォンバット科の哺乳類。体長約1メートル。尾はほとんどなく、ずんぐりし、アナグマに似て穴居性で、草食。主に夜行性。オーストラリアに分布。ふくろぐまもどき。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウォンバット」の意味・わかりやすい解説

ウォンバット
うぉんばっと
wombat

哺乳(ほにゅう)綱有袋目ウォンバット科に属する動物の総称。同科Vombatidaeの仲間はオーストラリアとタスマニア島に分布。大きさは種により非常に異なり、体形はアナグマに似てずんぐりしている。尾はほとんどなく、前足後足ともに5本の指があり、後足の第1指以外には頑丈なつめがあって、穴を掘るのに適している。育児嚢(のう)は後方に開口し、中に1対の乳頭がある。丘陵地帯に普通単独で生活し、夜行性で、昼間は巣穴で休息している。おもに根、地下茎、草を食べる。1産1子で、子は育児嚢内で育てられ、完全に毛が生えてから外へ出る。性質はおとなしく、人によく慣れる。わりあい長生きで、26年間飼育された記録がある。3~5種に分類される。

 ヒメウォンバットVombatus ursinusはタスマニア島とバス海峡の小島に分布する。小形で、頭胴長67~95センチメートル、体重11~13キログラム、鼻先に毛がない。体毛は柔らかく下毛が多い。体色は灰色、薄い黄褐色、黒色などがある。オーストラリアウォンバットV. platyrrhinusはオーストラリア南東部に分布する。前種に似ているが大形で、頭胴長95~115センチメートル、体重36キログラムぐらいになる。鼻先に毛がない。体毛は硬く、下毛が少ない。体色は黄土色、黄土色と黒色の霜降りなどがある。ケバナウォンバットLasiorhinus latifronsはサウス・オーストラリア州の南半分に分布する。頭胴長87~88センチメートル、体重25~27キログラム。鼻先にビロード状で白色の毛が生えている。体毛は長く柔らかい。体色は灰色である。

[中里竜二]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ウォンバット」の意味・わかりやすい解説

ウォンバット
wombat

齧歯(げつし)類に似た歯をもつ穴居性の有袋類。有袋目ウォンバット科Vombatidaeに属する哺乳類の総称で,ヒメウォンバットVombatus ursinus,ミナミケバナウォンバットLasiorhinus latifrons,キタケバナウォンバットL.krefftiiの3種がある。オーストラリア南東部とタスマニア島に分布する。体長70~120cmで尾は痕跡的。ずんぐりとした体,短くがんじょうな四肢,強力なかぎづめは穴掘りに適する。歯根がなく,終生のび続ける門歯は大きくがんじょうで,植物などをかじるのに適する。丘陵や砂地にすみ,繁殖期以外は単独で生活する。日中は地中に掘った,ときに長さ30m以上に達する巣穴で眠る。夜に巣穴を出て,踏みなれた道を通って採食に出かけ草や根を食べる。動きは意外とすばやく,また,人にもよくなれる。雌は5~7月に1子を生む。子は半年間育児囊で育てられる。両種とも数が非常に減少しており,とくにケバナウォンバットは絶滅が心配される。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウォンバット」の意味・わかりやすい解説

ウォンバット
Vombatidae; Phascolomid; wombat

有袋目ウォンバット科に属する動物の総称。普通2属3種に分類されるが,さらに多くの亜種を認める説もある。大きさは種によって異なり,体長 70~120cm,体重 11~35kg。体つきは小型のクマに似てずんぐりしており,尾は痕跡程度しかない。四肢は短く,堅牢な鉤爪が生えている (後肢の第一指を除く) 。歯は齧歯類に似ており,一生伸び続ける。夜行性で,昼間は地下に掘ったトンネルで眠り,夜になると採食に出る。おもにイネ科やセリ科の植物および低木の根などを食べる。繁殖期以外は単独生活をする。1産1子で,子は生後6~7ヵ月間育児嚢で育ち,生後 15ヵ月後に離乳する。性格は温和で,人に馴れやすい。オーストラリア南東部に大型のオーストラリアウォンバット Vombatus platyrrhinus,タスマニア島とフリンダーズ島に小型のヒメウォンバット V.ursinusが分布する。この2種は体毛が粗く,耳が丸く,鼻先に毛がない。オーストラリア中南部には,柔らかい体毛ととがった大きな耳をもち,鼻先に毛が生えたケバナウォンバット Lasiorhinus latifronsが分布する。ウォンバットは放牧地を荒らすため害獣とみなされ,生息数が減少した。近年は法律で保護されているが,最北部に分布するケバナウォンバットの一種 (キタケバナウォンバット) のコロニーは1ヵ所しか確認されていない。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ウォンバット」の意味・わかりやすい解説

ウォンバット

有袋目ウォンバット科の哺乳(ほにゅう)類の総称。体長87〜115cmほど。オーストラリア南部,タスマニアに分布。低木林,草原などにすみ,草食性。体色は黒,褐色〜灰色まで。指には鋭い爪(つめ)を備え,自ら掘った穴や洞穴で昼間を過ごし夜間活動する。1腹1子。門歯も臼歯(きゅうし)も根がなく,齧歯(げっし)類によく似る。ヒメウォンバット,ミナミケバナウォンバット,キタケバナウォンバットの3種が知られる。
→関連項目有袋類

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のウォンバットの言及

【絶滅生物】より

…熱帯林には多くの種の動物がすみ個体数が少ないので,森林の破壊で絶滅する恐れが多い。オーストラリアのウォンバットはウシによる生息地の破壊により,タズナツメオワラビーはイヌとキツネに捕食されてともに激減した。ニューギニアのナガハシハリモグラ,キノボリカンガルーなどは狩猟により,南アメリカのメガネグマはトウモロコシの,タテガミオオカミはニワトリの害獣として駆除されて激減し,ライオンタマリンはペット,動物園の展示,医学用実験動物などに1960年ころから年間200~300頭も輸出され,1981年には生息数が100頭以下と推定される危険な状態になった。…

※「ウォンバット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

靡き

1 なびくこと。なびくぐあい。2 指物さしものの一。さおの先端を細く作って風にしなうようにしたもの。...

靡きの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android