ウォーカー(T-Bone Walker)(読み)うぉーかー(英語表記)T-Bone Walker

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ウォーカー(T-Bone Walker)
うぉーかー
T-Bone Walker
(1910―1975)

アメリカのブルース・ギタリスト。「モダン・ブルース・ギターの父」と称され、その影響力は絶大である。

 テキサス州出身。本名はアーロン・ティボー・ウォーカーAaron Thibeaux Walkerだが、テキサス州は牛肉の最大の産地でもあるため、ステーキにちなんでTボーン・ウォーカーとよばれるようになった。義父のマーコ・ワシントンMarco Washingtonは、ダラス・ストリング・バンドの一員であらゆる楽器を演奏した。ウォーカーは幼時にダラスというテキサス最大のブルース都市に移り、急激に発展したブルースの現場で幼いころから演奏家としてもまれながら育つ。

 1920年ごろにはブラインド・レモン・ジェファソンのリード・ボーイ(盲人の先導役)を務め、1923年ごろからギターの演奏を試みるようになり、メディシン・ショー(音楽のみならず、寸劇や手品なども盛り込んだ、一種の大衆娯楽ショー。薬売りの余興から始まった)に出演したり、アイダ・コックスIda Cox(1896―1967)のグループの一員として活動。1929年にはオーク・クリフ・Tボーン名義でカントリー・ブルース調の曲で初録音を行う。1933年ごろにはジャズ・ギタリスト、チャーリー・クリスチャンとも共演しており、その後彼らによって展開されたジャズとブルースの革新のための前奏曲が奏でられていたことになる。1934年にはロサンゼルスに移住。レス・ハイトLes Hite(1903―1962)の楽団で活動しながら、1942年にキャピトルから発表した「ミーン・オールド・ワールド」でエレクトリック・ギター奏法の魅力を全開させ、ブルース界に衝撃を与えた。ジャズのスウィング感をもちつつ、より高度な奏法テクニック、洗練された味わい、さらには優れたリズム感による曲展開を見せるウォーカーの演奏は、ギターがブルースの中心的楽器となることへの道を拓くものだった。

 その後オールド・スウィング・マスター、ブラック&ホワイトといったレーベルに録音を続けたが、1947年の「コール・イット・ストーミー・マンデイ、バット・チューズデイ・イズ・ジャスト・アズ・バッド」は、その後「ストーミー・マンデイ」とタイトルを変え、ブルースでもっとも人気のあるスタンダード曲として定着していく。この時代の作品を集めた『モダン・ブルース・ギターの父』(1974)は、モダン・ブルースを代表するアルバムとしてゆるぎない評価を得た。またウォーカーはステージではダンサー、コメディアンもこなし、しばしばギターを背中にまわして弾いたり、ステージはエンターテインメント性に富んだものだった。

 1950年以降インペリアル・レーベルに移り、よりリズム・アンド・ブルース的側面を強くした「コールド・コールド・フィーリング」、妻に捧げた「バイダ・リー」のほか「ストローリン・ウィズ・ボーン」「アイ・ゲット・ソー・ウィーリー」など数えきれない名作を発表した。これらの曲によりクラレンス・“ゲートマウス”・ブラウンClarence“Gatemouth”Brown(1924―2005)、ピー・ウィー・クレイトンPee Wee Crayton (1914―1985)、ジョニー・ギター・ワトソンJohnny Guitar Watson(1935―1996)といったテキサス出身のブルースマンがウォーカーに強烈に感化されたことは無論だが、第二次世界大戦後最大のブルース・スター、B・B・キングがウォーカーのスタイルを下敷きにしたことからとくにウォーカーの歴史的評価が固まった。

 その後も1955~1957年録音の『T・ボーン・ブルース』や1968年発表の『ファンキー・タウン』Funky Town等、秀作を残しているが、ブルースにおける歴史的な革新への評価の割には、いま一つ深く聞かれていないきらいがある。B・B・キングやマディ・ウォーターズのように、ロック・ミュージシャンと直接的接点をもたなかったから、ということも一因である。ロサンゼルスで肺炎を悪化させ死亡。その葬儀は、同市のブラック・コミュニティでは、10年前に亡くなったサム・クック以来の規模だったという。カントリー・ブルースからジャズまでの統合を具体化し、真のモダン・ブルースをフルに開花させた偉大なミュージシャンである。

[日暮泰文]

『T-Bone Walker Interview(in Living Blues Magazine #11, #12, 1972, 1973, University of Mississippi, Jackson)』『Helen Oakley DanceStormy Monday; The T-Bone Walker Story(1987, Louisiana State University Press, Baton Rouge)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

関連語をあわせて調べる

今日のキーワード

羂索

《「羂」はわなの意で、もと、鳥獣をとらえるわなのこと》5色の糸をより合わせ、一端に環、他端に独鈷杵(とっこしょ)の半形をつけた縄状のもの。衆生救済の象徴とされ、不動明王・千手観音・不空羂索観音などがこ...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android